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噂をすれば影……
その夜、白浜家では赤飯だった。急なことにもかかわらずきっちり用意した母親はきっと仕事ができる人なのだろう。
その席に次郎はいない。引き止める羽美の声が聴こえていないかのように帰ってしまったのだ。その背中は、まるで何もできなかった自分に落ち込んでいるかのようだった。
ただ、次郎はそんな赤い血を見て思い出したことがある。
彩花だ。
四年前、藤崎家の離れの自室で、彩花と初めての行為をした後……
布団に付着していた赤いシミ……
あれは確かに彩花の血だったはずだ……
そこでふと、不思議に思う次郎。
今回自分と羽美は何もしていない。なのになぜ羽美は血を流していたのか……
次郎に分かるはずもないが、頭を悩ませていた。
そして、そんな時に限って……
アパート。
次郎の部屋の前。
膝を抱えて力なく座り込む女の子。
彩花だった。
「次郎……助けて……」