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  作者: 暮伊豆
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繁華街にて

藤崎家を追い出された次郎に行く宛はない。祖母の待つ実家に帰れば良いのだが、帰れない。自分のことを立派な庭師になったと思っている祖母。そんな祖母に藤崎家を追い出されたなどと言えない次郎だった。なにせ、なぜ追い出されたかすら分からないのだから。

ならばどうする? もちろん次郎には分からない。分からないまま歩き続ける。健二に蹴られた肩が、殴られた頬が痛む。しかし本当に痛むのは次郎の心なのかも知れない。


藤崎家の立地は街の中心部。どの方向に向かっても街から出ることはできる。次郎が進んだ方向にあるのは、繁華街だった。偶然なのか、それとも健二に連れられて行った思い出が体を動かしたのか。


ただならぬ様子で歩く次郎を心配する者もいた。月に何度か健二に連れて来られていたため、顔を見知っていたのだろう。


「次郎さん、寄ってってよ」


そう言われると次郎は断らない。誘われるままに店に入ることになる。


「健二さんにツケとくから好きに飲んでよ」


『ツケ』の意味は分からないが、この店で金を払ったことはない。いつも健二が払っていたのだから。だから言われるがままに飲んでいる。

次郎はビールに少しペパーミントを垂らした、所謂『ミントビア』が好きだ。今夜もそれを飲んでいる。ツマミは鯨のベーコン、これも次郎の好物だ。


「そういや鞄なんか持ってどこか行くのかい?」


聞かれたからには答える次郎。なぜか分からないが健二から出ていけと言われたことを。

出て行けとは言ったが、ここであったことを誰にも喋るなと言わなかった健二の過失である。訊かれるがままに彩花との行為まで話してしまった。


「ふざけんな! 何ただ飲みしてんだよ! 出ていけ! ぶち殺すぞ!」


いつもにこやかだった男が豹変した。やはり次郎には分からない。しかし出ていけと言われたからには出ていくしかない。普段より飲み過ぎたせいか、足元が覚束ないが行く宛のないまま歩き出した。


「ちっ! 二度とその顔見せんなよ!」


再びここに来れないということを理解した。

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普段はこんなのを書いてます。
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― 新着の感想 ―
[良い点] New!のマークが更新情報に出ていて「暮伊豆パイセン、純文学とかも書くんだ~」と軽い気持ちで読み始めて見れば! なんと谷崎潤一郎のかほりがします! 暗くて淫靡で艶めかしい、旧きエロティシ…
[一言] 踏んだり蹴ったり!w 次郎マジでこのままだとヤバいなあ。 何か変わるキッカケがあればいいんでしょうけど。
[一言] ううむ。これは悲しい。悲しすぎます。
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