羽美の成長
やはり断ることなどできない次郎。白浜組にて風呂に入っている。羽美と一緒に。
「私背が5cm伸びたんよ!」
「こないだのテスト100点やったし!」
「書き初めが銀賞でね!」
湯船に横並び、嬉々として話しかけてくる羽美。それを次郎はすごいすごいと返事をしている。
「じろー背中流してあげる!」
勢いよく立ち上がる羽美。次郎も湯船を出ようとする。その時だった。
羽美の下腹部から赤い血が流れ落ちている。それなりの量だ。動転して取り乱す次郎。傷口を抑えるべきか血を拭くべきか、全く分からずあわあわとうろたえることしかできない。慌てながらも次郎は必死に考えた。祖母からは小学生の頃、傷は舐めておけばいいと教わった。ならば自分が舐めてきれいにするべきなのか。位置的に羽美が自分で舐めることはできないはずなのだから。
しかし、いくら次郎でも頼まれもしないのに他人を舐めるのはまずいと分かっている。しかし、このままでは羽美の傷がどんどん酷くなっていくのではないか。
どうしていいか分からずとうとう固まった次郎。そんな次郎をよそに羽美は冷静だった。
「あー。ごめんねじろー、先に上がるね。」
羽美は体をさっと流して浴室から出ていった。次郎は理解が追いつかない。追いつかないが、羽美のあの態度を見るときっと大事ではないのだろうと安心していた。
一方、風呂から出た羽美は一人トイレに入り、震えていた。学校で習っていたため生理については当然知っている。誰にでも起こることだと。だが、それがこんなにも不安で堪らないものだとは想像もしてなかった。自分の下腹部から流れ落ちる真っ赤な血……見ただけでなぜか泣きそうになってしまった。しかし、次郎の前で情けない姿は見せられない思いで必死に平静を装い、逃げるように風呂から出たのだった。