君を自転車の後に乗せ
昼からのアンカー打ちは次郎を含めて三人となった。他の二人が違う作業に入ったためだ。
どうにか夕方までに残りのアンカー打ちも終わり、次郎達は山を降りた。これで下準備は終わり、明日からはメインの作業が始まるだろう。
白浜組の事務所に戻る。荷物の積み下ろしはないため着いたらそのまま解散となる。次郎はいつも通り自転車に乗ってアパートまで帰るだけ。今日は特に買い物をする必要もないためまっすぐ帰っている。
「あー! じろー!」
羽美だ。学校の帰りなのだろうか。普段よりかなり遅いようだが。
「コンクールに出す絵を描いてたら遅くなったんよ。ねー、家まで乗せて!」
自転車の後に乗せろということだろう。もちろん次郎が断るはずもなく、羽美を乗せて来た道を白浜組まで戻っていった。
「じろー臭ーい!」
汗の匂いだ。今日は一日中ハンマーを振るっていたため、かなりの汗をかいた。そして今でも手首が痛くて仕方ない。幸い明日の仕事にハンマーを使うことはないそうだが。
そして羽美は、臭いと言うくせに次郎の小さな背中にしがみついていた。
羽美はそれからも次郎が臭い、汚いと文句を言い続けている。次郎としてはそれを聞いても特に言うことがない。仕事の後なのだから当たり前だ。
そして自転車は白浜組に到着。羽美を下ろして再びアパートへ帰ろうとする次郎に羽美が……
「じろーは臭くて汚いから一緒にお風呂入ろっ!」
そう言った。