仕事の流れ
最初は法面周辺の伐採から開始する。山を削った法面を金網で覆うため、邪魔な草木を切る作業だ。
次に各種資材の運搬。
クレーン車がいれば楽なのだが、山奥の現場にそうそう来ることはない。よって人力で運ぶしかない。例えば200mmのアンカは一箱で15kg、400mmのアンカならば一箱で20kgを超える重さだ。そのような物を肩に担ぎ、崖の上、もしくは小段と呼ばれる法面の中腹まで運ぶのだ。これで半日、下手をすれば一日潰れることもある難作業だ。
次に網上げ。
金網を法面にかける作業だ。これは大抵三人で行う。崖下にロープを投げ、一人が下で金網をセットし、それを二人が上から引っ張るのだ。
次郎は上で引っ張る役だ。そして上で引っ張る役にも簡単な方と難しい方がある。当然次郎は簡単な方だ。網のサイズは2m×10m。それを法面に張っていくのだが、引き上げた網は一つ前に上げた金網と重ねなければならない。
「もうちょい上げれ! おし、そのまま持ち上げとけぇ!」
次郎の動きもだいぶ堂に入ってきた。
「おーし、置くぞ!」
金網の端を重ねて置き、400mmのアンカを打ち込み固定する。これを繰り返して法面を金網で覆っていくのだ。
その次は次郎の好きなアンカ打ちだ。金網を法面に密着させるための作業である。
そして最後にやることは、その金網に土、肥料、種の混合物を吹き付ける作業だ。法面の広さにもよるが、一つの現場が終わるまでにおよそ一、二週間。工事完了から一ヶ月もすれば崖に青々とした草が生えるというわけだ。
さすがの次郎もようやくこの仕事の流れを理解していた。
しかし、次の現場は……




