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休暇終了
遠くの方で救急車の音がしたような気がしたが、風呂につかっている次郎にはよく分からない。冬だというのにあれからかなりの汗をかいたため、風呂が心地よい。
白浜組やアパートの風呂も嫌いではないが、やはり実家の五右衛門風呂は格別だ。
自分で薪を割り、自分で湯を沸かすのは何年ぶりだろうか。祖母が入院したために薪が充分残っていたのは幸運と言っていいのだろうか。本日割った薪はまだ水分が抜けきっていないのだから。
妙な懐かしさも手伝って次郎は機嫌がよかった。先ほど会った、名前も覚えてない同級生のことなど頭から消えていた。
次郎の正月休みはこうして終わった。ご近所さん以外に誰も会うことなく。最終日は病院にも顔を出し祖母の顔も見た。まだ歩けないようだが元気そうな顔を見せてくれた。
「ええかぁ次郎、ふんばりさんよ! 分かっちょんな? 逃げ出したりしなさんなよ!」
祖母は、がんばれ、逃げ出したりするなと言っている。次郎だってもちろんそのつもりだ。




