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  作者: 暮伊豆


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次郎の実家

玄関のドアを開け中に入る。鍵などかかっていない。居間にいけばいつものように祖母が座っているはずだ。そしていつものように「よう帰ったのお」と声をかけてくれるはずだ。


いない……


居間にいない。ならば台所か?


いない……


トイレ?


いない……


どこにもいない。時刻は夕方。田や畑からも帰ってきているはずだ……買い物に行っているとも思えない。


こんな時、次郎にできることと言えば……


隣の家に行ってみることだ。

隣と言っても二百メートルは離れている。そこは次郎が「藤村ばーちゃん」と呼ぶ老婆一人暮らしの家だった。


「おお、じろちゃん。大きゅうなって。百合さんやろ? 二週間前から入院しとうげな。」


入院……なのに唯一の身内である次郎に連絡がなかったことを次郎が不思議がるはずもない。


「連絡行ってなかった? 百合さん連絡した言うてたげな。」


確かに連絡はなかった。それでも祖母が連絡をしたと言うからにはいくつか可能性がある。

・電話をしたが留守だった。昼間は不在だし、留守番電話機能などない。

・手紙を出したが、次郎が読んでない。郵便受けに入る広告に紛れていたのかも知れない。

・そもそも祖母が嘘をついている。次郎に心配をかけまいと連絡をとらなかった。


もちろんそのようなことを次郎が考えられるはずもない。ただ明日、病院に行こうと思ったのみだ。

病院にはバスで行く必要があるため、今夜はもう行けない。そのまま藤村家で夕食をご馳走になる次郎だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ば、ばあちゃん……!(ハラハラ)
[一言] これは次郎の別の「傷」になる?
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