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次郎の休日
「じろー! 朝ごはんだよ!」
来客は羽美だった。おそらく母親から弁当を持たされ、学校に行くついでに次郎に届けるよう言われたのだろう。
のそりと起き上がった次郎。
「うわっ、じろーその顔どうしたの!? 青血になってる!」
青血とは内出血やアザのことだ。この辺りではこう言うらしい。
どうしたと聞かれたら正直に話す次郎。小学生の女子にはいささか刺激の強い話ではないだろうか。
「そうなんだ……殴られたんだ……じろーまだ痛い?」
そう言われると実は痛くない。目が覚めたら不思議と痛みがひいていたようだ。
「痛くないんだ……こんなに痛そうなのに……じろー大変だったんだね……もうあんな女を部屋に上げたらだめだよ?」
思わずうんと答えてしまった次郎。珍しいこともあるものだ。普段の次郎なら何と返事をして良いか分からず黙っていただろうに。
「じゃあまた夕方来るからね!」
頭の奥さんが作った弁当を食べると、胃に、心に何か温かいものが広がるのだった。