藤崎家から来た男
彩花が姿を見せて、そして消してから数ヶ月後の夜。次郎の部屋が強く叩かれた。彩花以外に誰も来たことのない部屋だ。少し嬉しくなり扉を開ける。
すると、そこにいたのは藤崎家の二男、健二だった。
「次郎ぉ! てめぇ彩花をどこにやったぁ!」
そう言われても次郎に分かるはずがない。
「とぼけんな! 彩花が! ここに! 来たことは分かってんだ!」
そう言って殴りつける健二。しかしいくら殴られても何も知らない次郎。返事もできず、ただ殴られるまま。
「うっるせぇどぉコラぁ? 何時じゃあ思うとるんかぁ?」
隣の住人だ。次郎と付き合いはないが、すれ違えば挨拶ぐらいはする。
「んじゃてめぇ? こんな貧乏アパートに強盗かぁ? 上等じゃねぇかぁおお? とれるもんならとってみろいや!」
「チッ……」
健二は次郎を蹴り飛ばし部屋を後にした。
「おい、大丈夫かよ。病院行くか? 警察呼んでやろうか?」
隣人は親切だ。次郎はどうしていいか分からず、頭に電話をする道を選んだ。次郎にしては良い判断だろう。
三十分後、やって来たのは頭ともう一人、見知らぬ男だった。




