彩花の行方
次郎は普段より長く湯船に浸かっていたためか、少しぼおっとしているようだ。もしかしたら普段より深く頭を使ったためかも知れない。
風呂から上がり、事務所内で頭の帰りを待つ。テレビなんかを見ながら。
それから十五分後、頭達が帰ってきた。
「おお、なんじゃ、まだおったんか。」
そんな頭に相談を始める次郎。支離滅裂で要領を得ない次郎の話でもどうにか理解できた頭。
「なるほどのぉ……藤崎家の令嬢かよ……ぜってぇ事件になってんなぁ。まあええ、わかった。今からそいつを連れて来いや。話ぁそれからじゃあ。ええの?」
それを聞いて慌ててアパートに帰る次郎。自転車の後ろに彩花を乗せて白浜組に戻るつもりなのだ。
だが、次郎が帰るとアパートの部屋はもぬけの殻だった。彩花の姿がどこにも見えない。想定にないことが起こると何もできなくなる次郎。慌てて白浜組に電話をかけ、頭に状況を説明する。
「そんならしゃあねぇのぉ。おめぇちっと戻って来いや。一緒に警察行くでぇ。面倒やが行かんにゃあどねぇもならんわ。」
警察と聞いて身を固くした次郎だが、頭が一緒なのだ。何も怖がることはない。そう考え再び白浜組へと向かった。
なお、次郎にとっての貴重品が収納されている戸棚の引き出しが開けっぱなしであったことなど、気付いてもいない。