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  作者: 暮伊豆
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友人、誠子

問題が起こったのは友人の一人、飯田家の二女誠子(せいこ)だった。藤崎家での出来事に味をしめて庭仕事に託けて次郎を呼んだのだ。


藤崎家専属の庭師見習いではあるが、休日に他家に行くことは難しくない。次郎にしてはきちんと健二にも話しており、やはり問題はなかった。


問題は数ヶ月後、誠子の妊娠が発覚したことである。次郎に文句をねじ込むも彼に理解できるはずもない。誠子の頼み通りの行動をして彼女も満足していた。無論自分もそれなりに気持ちよかった覚えもある。それなのになぜ文句を言われるのか次郎には分からない。分からないが怒られているのだから謝るしかない。そのまま誠子に言われるがままに書類に署名し少なくない金額も支払った。あっさり支払ったことで今後も財布として使えると見込んだ誠子だが一つミスをした。次郎に対する口止めだ。誠子の常識ではこのようなことを他人に吹聴することは恥ずべきことだ。しかし次郎は口止めされていないため、彩花に訊かれるがままに話してしまう。


彩花は自分でも思った以上に激怒した。まるで大事なおもちゃをとられた子供のように。確かに自室でみんなして次郎を弄んだことが原因ではあるのだが。自分の奴隷である次郎を断りもなく使用した上に金まで巻き上げたのだから。


結局誠子は金を全て返金させられ、堕胎費用は彩花が貸し付ける形となった。そもそも本当に次郎の子供なのかも不明なのだから。


彩花の激怒は独占欲か、それとも男女の情ゆえか。彼女の本音は分からない。だが次郎には二度と他の女の誘いに乗らないようきつく命令をした。



そして次郎の心に僅かな傷が残った。


言われた通りにしたのに怒られた。最中は声を出して喜んでくれていたのに。それに彩花もだ。自分以外の女の言うことをきいてはいけない。自分だけに奉仕しろと酷く怒っている。頼み通りにしているのになぜ怒られるのか次郎には分からない。祖母の言う通り、自分は人の言うことをよく聞いて真面目に生きているのに。



それからも彩花は次郎の部屋に訪ねてくる。自室と違って離れであるために声を抑える必要もなく、友人のいない次郎には来客もない。非常に都合のいい男であった。

ただ、彩花は知らなかったのだ。兄である健二が次郎をかわいがっているだなんて。藤崎家の二男ともあろう男が庭師風情と仲良くしているなどと。


つまり、健二が次郎の部屋を訪ねてくることも、二人の行為を目撃することも必然だったのだ。

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普段はこんなのを書いてます。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 地の分だけで読ませるテクニック。これはまさに『正しい』純文学だと思いました。 [気になる点] 続きが気になりますね。 [一言] 自分の作品に精一杯(週休1日なんですー)の中、ふと、『傷』と…
2020/08/02 06:59 退会済み
管理
[良い点] とある方が「純文学は反モラルを描写する」こともそのジャンルの特徴としてあげていらっしゃいました 文体も淡々としていて、先が気になります つづきたのしみにしています
[良い点] 純文学は、会話文が少なくて心理描写が深いという印象です。 シンプルなタイトルが、逆に目を引きました。 思わずこちらも読みに来てしまいました(^^) 昭和くささ、読みやすい日本文学的な文章、…
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