次郎とリンゾー
仕事中、現場によっては会話が多いこともある。本日の次郎の役割は巨大なミキサーに土を投入することだった。次郎とリンゾー、二人一組である。次郎はサンリオバーグFZと書かれている四十リットルの袋、リンゾーはCBピートモスXXと呼ばれる直方体の袋の中身をそれぞれ投入している。さらにリンゾーはミキサーの蓋を開けたり閉めたり、ミキサーの刃を回したり止めたりと機械の操作まで行っている。
そんなリンゾーが話しかけてくる。
「彼女かぁ? どこで見つけたなぁ?」
聞かれたので素直に話す次郎。庭師時代のことから彩花の身元まで。
「そんで昨日はお楽しみかぁ?」
お楽しみの意味は分からないが、分からないなりにすぐ寝てしまったことを話す。
「なんじゃあ情けないのぉ。まあええわ。とりあえず忠告な。その女ぁさっさと追い出せ。やべえことになんぞ? あと帰ったら頭に話しとけ。悪いようにはならんだろうぜぇ。」
テキパキと手を動かしながらも助言をくれるリンゾーが次郎は好きだった。この一年間、最も次郎の面倒を見てくれたのは間違いなくリンゾーだろう。
重い袋をミキサーの上まで持ち上げ、いつでも投入できる場所に置く。そこから投入するまでの待ち時間がお喋りの時間だ。
リンゾーの言う「やべえこと」の意味は分からないが、言われた通り頭に話そうと思う次郎だった。