風呂上がりの次郎
次郎が風呂から上がると彩花は次郎の布団で寝ていた。ロクに干してもない汗臭い布団。よく文句も言わず寝たものだ。ベランダに洗濯物を干すと次郎も眠くなった。
唯一の布団は彩花が占領している。次郎は深く考えることなく彩花の横に潜り込んだ。布団は一つしかないのだから。
「キャアァ! やっ、おに、やめっ……なんだ、次郎か……驚かせないでよ……何? 私が欲しいの?」
そんなつもりはなかったのだが、彩花の匂いを間近で嗅いだためか当時の記憶が蘇ってきた。彩花との行為は確かに大変だったが、自分も気持ちいいという面もあったのだから。
だから次郎は素直に首を縦に振った。
「ふん……所詮あんたもタダの男よね。いいわ。私の身体、好きにしたら?」
そう言われ彩花に抱きついたのだが、次郎にできるのはそこまでだった。好きにしろ、と言われても次郎には分からない。服を脱がせろとか、どこどこを舐めろ、などと言われないと何もできないのだ。そして次郎は眠ってしまった。
普段から体を酷使しているのだから当然だ。
「次郎の馬鹿……」
彩花の呟きは誰にも聴かれることはなかった。




