表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 暮伊豆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/156

次郎のステーキ

自転車に二人乗り。次郎のアパートに到着した。


「えっ……」


部屋に立ち入った瞬間、彩花の表情が一変した。いわゆるワンルーム、庭師時代に暮らしていた離れと比べてもかなりの狭さだからだろう。


それっきり座り込み、口を閉ざしてしまった彩花。ステーキを焼くのではなかったのだろうか。

時刻は三時過ぎ。まだ腹が減ってない次郎は特にすることもなかったので計算ドリルを始めた。三桁×二桁のかけ算は難しいがどうにか解けるようになっている。


「ねぇ……もっといい部屋に引っ越しなさいよ……」


そう言われても引っ越しや手続き、アパートの見つけ方など次郎に分かるはずがない。このアパートだって頭が用意してくれたのだから。ちなみに家賃は毎月給料日に現金を大家の所に届けている。


分からないことには返事ができない次郎。沈黙の時間が続く。


「ステーキ焼いてよ……」


彩花が料理をするのでなかったのか。次郎はそう考えることもなく焼き始めた。


普段から使っているフライパンで焼きそばを作る感覚でステーキを焼く次郎。ステーキの焼き方など知っているはずがないのだから。


そして五分後。汚れの染み付いた皿に乗せ、彩花の前に置く。


「フォークは? ナイフは?」


そんな物があるはずがない。ここにあるのは箸とスプーンだけだ。


「こんなの食べられないわよ。切って。」


ステーキをまな板に乗せ、適度なサイズに切る。次郎が一口だと思うサイズにだ。


「何よこれ! 焼けてないじゃない! ちゃんと焼いてよ!」


断面を見れば分かることだが、肉が厚いため中まで火が通ってないのだ。彩花の知るレアとは全くの別物だったようだ。


火が通ってないと言われたために今度はしっかりと焼いた。小さく切ったこともあり、しっかりと火が通ったことだろう。


「焦げてるじゃない! 焼き過ぎよ! ウェルダンは好きじゃないわ! これは次郎が食べなさいよ! 私にはあっちを焼きなおして!」


言われるがままにもう一枚の方を焼く次郎。今度は先に切っておいた。ステーキの意味がなくなるが、次郎に分かるはずもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普段はこんなのを書いてます。
i00000
― 新着の感想 ―
[一言] 平成や令和ならともかく昭和にステーキって無茶苦茶高級な食品だったような。 焼かせるほうも焼かせるほうという気がしないでもないですが……。 ハラハラしながら読みましたっ!
[良い点] うう……お嬢様の嵐が吹き荒れている……。 そう言えばベルコンといえば、もともと持っていたイメージはやっぱり工場とかでしっかりラインが固定されているものだったので、作業現場での、あの数メー…
[良い点] うわぁ……。かくまってくれと言ってこれかよ……。 次郎じゃなかったら、とても我慢できるもんじゃないですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ