次郎と羽美
「げぁははは! カッター流さんでえかったわぁや!」
昼休み、仕事を止めたことを謝る次郎にタナーはそう言った。
「早く言えぇのぉ。ガンに入ったら面倒なけぇのぉ!」
ガンさんの言い方は例えカッターを流してしまっても致命的ではないような口ぶりだった。きっと仕事が増えて面倒なのだろう。
そして昼から。あれだけ山と積まれていた袋はどんどん無くなっていく。すると何が起こるのか?
袋の積み直しだ。ベルトコンベアーはだいたい地上から五十センチ〜一メートルの高さだ。袋は上から落とす。それがなくなると下の袋を抱え上げてベルトコンベアーに投入する必要がある。しかしそれをしてしまうと無駄にこぼれる土が増える上に手間が増えて敵わない。だからリンゾーは次郎に袋を積み直すように言ったのだ。例えば十列に十ずつ積んである袋を、四列に二十五積むように。それらの作業を仕事の合間に行わなければならない。定期的にベルトコンベアーは動くのだから遅れずに土を投入しなければならないのだが。次郎は再び混乱していた。
しかし、リンゾーが何度も次は何しろ、あれはどこに積め、もうすぐベルコンが動く、など細かく声をかけてくれたために遅れることもカッターを失くすこともなかった。
やがてリンゾーから。
「おし、終わったでぇ! 落ちたやつを拾ってベルコンに入れとけ!」
ベルトコンベアーの周辺は溢れ落ちた土がたくさん溜まっている。それらをスコップで拾ったり、ベルトコンベアーの隙間に詰まった土を一緒に流したりするのだ。
「そんじゃあシートしとくで!」
ベルトコンベアーとZXソイルRファクター4をまとめてシートで覆い、上に重しを載せる。そしてようやく次郎の長い一日は終わった。
「うわっ、じろー汚ーい。真っ黒やねー。」
いつものように白浜組で入浴しようとしていた次郎。そこに羽美が入ってきた。今まではだいたい三回に一回ぐらいの割合で入ってくるのだが、羽美が一人で入ってきたのは初めてだった。