次郎の失敗
ベルトコンベアー上の土を探ってカッターを探す二人。もしガンの内部に投入されてしまったならば探すことが困難になるのだろう。
「ちっ、ベルコンにぁねぇな。ガンに入っちまったか……」
「一応足元も見とけのぉ。次郎んとこものぉ。」
ガンさんに言われた隣の男は散らばっている次郎の周囲を探す。まずは袋を整理することからだ。乱雑に置かれた空袋が見る見る整理されていく。
「あったぁ! ガンさんあったでぇ!」
次郎の足元からカッターが見つかった。つまり、ベルトコンベアーには流れていなかったことになる。
「よっしゃ。やれやれやのぉ。おーいタナーさん! 問題ねぇーぞぉー! 動かすぜー!」
現場にいるのは四人。ベルトコンベアーを担当する次郎と隣の男。ガンを操作するガンさん。そしてガンから太いホースが繋がっているのだが、その先にタナーと呼ばれる男がいた。高圧で土を吐き出すために、酷く暴れるホースを制御しながら崖、法面に土を吹き付けていた。急斜面にロープでぶら下がりながら。
「おぉリンゾー、おめぇもーちぃと次郎の面倒見てやれやぁ? あいつ追いついてねぇわぁや!」
「おお悪い。よぉ見とくわぁ!」
明らかに次郎のミスで仕事を止めたのに、誰も次郎を責めることはない。彼らがお人好しなのか、それともこれが普通なのか。次郎には分からない。だが、カッターを失くした時はすぐ言えばいいということは分かった。
リンゾーと呼ばれる男から次郎へ段取りが説明される。本来なら仕事を始める前に言うべきなのだろうが、リアルタイムで行うのが白浜組のやり方なのだろうか。