接見
「滝川さん初めまして。 弁護士の丘野 勇次郎と申します。勇次郎の次郎は滝川さんの次郎と同じ漢字です」
もちろん次郎に弁護士が何なのかは分からない。しかし、何となく味方であろうことは感じ取っていた。
「滝川さんには黙秘権というものがありますが、警察から説明は受けましたか?」
黙秘権が何かは分からないが、何かの説明を受けた覚えはないため首を横に振る次郎。
「なるほど。分かりました。では現時点で警察に話した内容を教えていただけますか?」
やはり首を横に振る次郎。そもそも何も話してないのだから。
「何も話してない、というわけですね。結構です。あ、何か書いたりはされましたか?」
何かに名前を書いたことを伝える。
「ちなみにそれは何に何を書きました?」
それは次郎には分からない。内容も難しい字ばかりで理解できていないのだから。
「分からないということですね。よく分かりました。では滝川さん、これ以降は何も話さないでください。お願いできますか?」
話すなと言われたら次郎は話さない。首を縦に振る。
「ありがとうございます。では釈放されるまで話さないでくださいね」
弁護士はそう言って帰っていった。次郎に釈放という言葉が伝わったかは怪しいが。
その手の中のメモには警察署に来た時間と面会開始時間、そして現在の退出時間が記されていた。