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署名
今にも泣き出しそうな顔をした次郎に、黒田は追撃をする。
「なあ、もういいだろう? お前だって疲れたよなぁ。腹だってへってるだろうさ。ああ、喉だって渇いてるよな? 冷たいコーヒー買ってきてやるよ。だからその間に名前書いといてな」
一転して猫撫で声だ。そして席を立ち、取調室から出て行った。と見せかけてドアの隙間から中を覗っている。
そして次郎は……署名してしまった。
そう。次郎は、頼まれれば、断らないのだ……黒田はそこまで読み切ったわけではないのだろうが、飴と鞭の使い分けに近いのだろう。見事にハマったようだ。
そして、ようやく弁護士との接見が成った。