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七の段
先に入っていた分、のぼせてきた次郎。少し恥ずかしい気持ちを抑えて湯船から出る。すでに体は洗い終えていたので、軽く拭いてから上がるだけだ。
「えー? じろーもう出るのー? 肩までつかって百まで数えたー?」
そう言われると、確かに百までは数えていない。それ以上の時間つかっていたのは間違いないのだが。
しぶしぶ湯船に戻り、声を出して百まで数える次郎。
「ほら、あんたも数えるんよ!」
「うん……三十三、三十四……」
そして、百まで数え終えた三人。
「さあ、あがろう。ほら海、拭いてあげる!」
弟の体を拭く羽美。それを尻目に自分だけ風呂から出る次郎。そんな羽美の視線がただ一点を凝視していたことに次郎が気付くはずもなかった。
その後は頭を含めた全員での夕食。
「じろーって七の段が言えないんだよ! 私が教えてあげるから!」
「なんだぁおめぇ? かけ算できねぇんか!? だめやのぉ! きっちり教えてもらえぇや?」
言われたら従う次郎。夕食後に羽美からかけ算を習うことになった。弟と二人で。