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黒田 再び
「待たせたな。新しい供述調書だ」
取調室に再び黒田が入ってきた。びくりと身を震わせる次郎。
「あぁ、お疲れ様っす。ったくいちいち手間ですよねぇ。面倒かけんなって話っすよ」
「まあそう言うな。頭が悪い人間ってそんなもんだろ? よし、じゃあ代わるわ。飯行ってこいよ」
「黒さんあざす。マジ腹へってたんすよ。あ、こいつの飯はどうすんすか?」
「あぁ、気にすんな。俺がやっとくからよ」
「はい。んじゃ、行ってきまーす」
若い刑事が取調室から出ていくと室内は次郎と黒田の二人だけとなる。
「さて、ここだ。ここに名前書きな。そしたら終わりだ」
数時間前にも書いた署名。その時と違うのは何も隠されてないこと。つまり供述調書の内容が次郎に見えることだ。もちろん次郎には、そこに自分が話してもないことが勝手に書かれているなどと理解できていない。
しかし、殺人教唆、暴行、公務執行妨害、などと書いてあることは分かる。意味までは分からないが……ただ、不穏なものは感じているようだ。
ゆえに次郎は署名を拒んでいた。
だが……