汚職
「どうします? あの女しぶといですよ?」
「焦るな。じっくり吐かせればいいだろう。男に命令されてやったってな」
「実際どうなんですか? あんな薄ら馬鹿な男に命令なんてできるもんですか?」
「はっ! できるわけねぇだろ! だから罪をおっ被せるには最適なんだとよぉ? あんな薄らクソ馬鹿は刑務所にでもぶち込んだ方がいいだろお? 何の役にも立たない腐れド低脳なんだからなぁ?」
「そりゃそーっすけど。それにしてもあの女も中々腹が据わってますよね。ちょっと首を縦に振れば刑期が五年は短くなるってのに」
「あの女をムショに入れるわけにはいかねぇ。だからさっさと言わせちまわねぇとな。自分は命令されただけってな」
「面倒っすね。適当にぶん殴って自白調書にサインさせるんじゃだめなんすか?」
「だめに決まってんだろ。あの女を殴ってみろ。お前さん酷ぇ目に遭うぞ? それにだ。自白調書にサインはしたものの、土壇場で無理やりサインさせられたなんて言われてみろ? 全部やり直しになるぞ? 当然お前の責任問題にもなる。勾留期限なんざどうにでもなるんだ。焦らずじっくり腰ぃ据えてやれや。分かったな?」
「はぁ、藤崎の当主でしたっけ? だりーことさせてくれますよねぇ。うちの署長どころかその上でも頭が上がらないって。マジっすか。やってらんねーっすね」
「警察も所詮はサラリーマンと何ら変わりはないってことだ。上には逆らえんさ」
「せいぜいボーナスに期待するしかないっすね」
警察署の屋上で若い警部と年配の平刑事はタバコを燻らせながら話していた。二人ともやる気のなさそうな顔をして。