取り調べ
彩花は取り調べを受けていた。昨夜から幾度となく繰り返された同じ質問をまた。
「お姉さんがあの男の料理を侮辱したからつい刺したと言うんだな?」
「つい、じゃない。憎くてたまらなかったから……」
「それは殺す気があったということか?」
「分からない……でも死んでもいいと思う……次郎が作ってくれた料理をゴミだなんて言う奴は死ねばいいんだ……」
「あの男は何も関与してないのか?」
「してない……迷惑ばかりかけちゃってる……」
「かばったりしてないだろうな? 本当はあの男が刺したんじゃないのか?」
「違う! そんなことない! 私が刺したもん!」
「調べたら分かることだぞ? 本当に君が刺したんだな?」
「本当だって! 何回言えば分かるのよ! 調べたらいいじゃん!」
「あの男に刺すよう言われたんじゃないのか?」
「だから! 言われてないって! あいつが次郎の料理をゴミだなんて言うから!」
「なぜゴミと言ったぐらいで刺したんだ? おかしいじゃないか。普通そのぐらいで人は刺さないぞ?」
「普通なんて知らない! 次郎の家に上がりこんで! 好き勝手に振る舞って! その上にゴミだなんて! 酷すぎるもん!」
「じゃあなぜ追い出さなかった? 刺すぐらいなら追い出せばいいだろう」
「知らない! 知らない知らない知らない知らない知らない! 全部私が悪いの! 私が私が私私私が! 私が次郎に! 悪いこと悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪い悪いいいいいぁぁぁ私私私私ぃぃ私私が私が私が私は私がああああああああああぁぁぁぁ!」
取り調べ室の机に頭を打ちつけて錯乱する彩花。それを涼しい目で見つめる刑事。取り調べはまだまだ終わらないようだ。