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冷たい弁当
次郎は天井を見ていた。
天井を見ながら考えていた。
この部屋で何が起こったのかを。
分かっていることは一つだけ。
彩花が、姉さんと呼ぶ人を刺したということ。その女の名前や、なぜ彩花が刺したかなど次郎には少しも理解できていない。
できていないが、次郎の心には何か引っかかるものがある。彩花が怒っていたことは分かる。でも分からない。何故に? 何に対して?
次郎には分からない。
自分はいつも通り風呂を沸かして料理を作った。それなのになぜ?
なぜ、いつもと違うことが起きたのか。
次郎には……分からない……
羽美が届けてくれた弁当は、もうすっかり冷たくなっていた。