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執事、川西
病院にて。手術はすでに終わっている。莉奈の身柄は集中治療室ではなく、個室に移されていた。
美砂が病室に入ると、中には一人の男がいた。
「おや? あなたは白浜組の奥様ですな。初めまして。藤崎家の執事、川西と申します」
「白浜美砂です。莉奈さんの容体はどうですか?」
「それ、あなたに関係あります? むしろあなたのところの従業員に責任を問いたいところですが?」
「は? うちの従業員にですか? どういった理屈でそうなったのでしょう?」
「当たり前でしょう。その部屋で事件が起きたわけですから。拉致監禁、しかも彩花様と共謀して殺人未遂と言われるのも当然でしょう?」
さすがの美砂もこれには開いた口が塞がらない。
「……その辺の話は警察としてください……」
辛うじてそれだけを伝え踵を返した美砂。勝手に上がり込んで拉致監禁などと……どれだけ面の皮が厚いのか、美砂は相手にしきれなくなったらしい。
「瀧川家がついてるからといい気にならないことですな?」
部屋を出ようとする美砂の背中に、川西が投げかけた言葉だった。