偉丈夫の家族
「おめぇどーせ行くとこねぇんだろ?」
頭が次郎に問いかける。その通りだった。
「仕方ねぇなぁ。しばらく泊めてやらぁ。最初の給料が出る頃にアパート行けぇのぉ!」
全員が二台のワゴン車に乗り込み、帰り着いた先はどこかの事務所だった。看板には『白浜組』と書いてあった。
車が駐車場に止まると荷下ろしが始まった。ロープを下ろし、小さな紐を下ろし、腰袋を下ろす。最後に車の中を軽く掃いて終了となった。どこに何を置いていいのか分からない次郎はただおろおろと見ているだけだったが。それを咎める者はいなかったが、教えようとする者もいなかった。
他の皆が帰るのを所在なさげに見送った次郎。
「とりあえず風呂入れや。それから飯にするでぇ。」
「アンタおかえり。あら? 新人さん?」
「おう。次郎ってんだ。面倒見てやってくれぇ。」
「ふーん、可愛らしい顔して。何歳?」
あたふたと返事をする次郎。
「へぇ、二十一なんだ。平均年齢下がるわー。」
「おら、さっさと風呂入ってこいや。」
頭に促され、おそらくは頭の妻に案内され次郎は風呂場に行く。体の痛みと服が汗で貼り付いているために、脱ぐのも一苦労だった。
湯船に浸かると、すぐにうとうととする次郎。とっくに限界なのだろう。体は沈み込み、もうすぐ鼻まで水没する、という時に……
「あれっ? 誰か入ってる?」
小学生らしき女の子が入ってきた。