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連絡
次郎からの要領を得ない説明と、部屋に残された血痕。そして隣人からの説明によりだいたいの状況を把握した美砂。すぐに次郎の部屋から電話をかけた。もちろん相手は……
『もしもし……』
「夜分に恐れ入ります。白浜組の白浜美砂と申します。瀧川一朗様をお願いできますでしょうか? 次郎さんのことでお電話いたしました」
『……お待ちください……』
毎度のことなのに緊張を隠せない美砂。電話越しだというのに。
およそ六分後。美砂の体感では何分なのだろうか。
『瀧川です』
それだけで美砂の心拍数は急上昇する。だが今はそんなことを気にしている場合ではない。
「……という状況のようです。私も現場を見たわけではないので正確とは言えませんが……」
『分かりました。ありがとうございます。後はこちらで対応いたします。彩花ちゃんが連行された警察署と、隣の方の名前が分かればまた教えてください』
そう言って電話は切れた。美砂が改めて電話をかけたのはそれから八分後だった。