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すれ違い
救急車が去った。同乗を求められたが誰も行かない。彩花が藤崎家本家の電話番号を教えたのみだ。
「ごめんね次郎。迷惑ばかりかけて。もう消えるから。」
彩花はそう言って受話器を上げて、ダイヤルを三回まわした。次郎は不思議そうな顔で彩花を見ている。
「おめぇもちぃとはしゃきっとせぇや! 今のうちにどっか連絡せんでええんか?」
隣人にそう言われた次郎はのそのそと電話の前に移動し、白浜組に電話をかける。
かけたのだが、次郎に状況説明などできるはずがなく、彩花が美砂に説明していた。
それを聞いた美砂はすぐに自宅を発ったのだが……
美砂が到着した頃には、部屋には次郎と隣人しかいなかった。