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到着
その時だ。遠くからサイレンの音が聴こえてきた。
「来たのお。とりあえずお前、玄関開けとけ!」
「なんで私が……」
「ええから行けや!」
ぶつぶつ言いながらも彩花は玄関の扉を開け、外に立つ。
「おう姉ちゃん。お前ついてんなぁ?」
「痛いよお……信じらんない! こんな豚小屋なんか来なけりゃよかった! まだなの!? ねぇまだ!?」
「ははっ、こかぁ豚小屋かぁ? 四畳半が二間に風呂と便所があるだけのオンボロアパートじゃけぇのお。心配せんでもえぇ。来たでぇ?」
「くそっ……くそくそくそ! 彩花なんかに……兄さんに言いつけてやる……」
天井を睨みつつも焦点の合わない目で悪態をつく。
「兄さんだぁ? さっきの話からするとあいつぁおめぇの妹なんじゃろぉ? 姉妹で何やっとんじゃあ?」
「いぎっあ……知らない……くそ、彩花め……ぜった……」
莉奈は意識を手放した。