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闖入
狂ったように笑い続ける彩花。どうしていいか分からず固まっている次郎。
「痛い……痛いよお! 救急車! 救急車呼んでよおっごほぁ! がふっげっふっ……やだやだやだ! こんなのっ、痛いよおおおお! 死んじゃうっぐふっ……」
「あはははははははははははははは! 死ね! 死ねばいいんだよもう! 次郎の料理をゴミだなんて言うやつはみんな死ね!」
「うるっせぇぞ! 何時じゃあ思うとるんかぁ! たいがいにせ……なんじゃあこりゃあ……」
彩花の狂った大声は、短気な隣人を呼び寄せてしまったらしい。次郎は部屋に鍵などかけないことが幸いだったのだろうか。
「さっぱり分からん……どうなっちょるんじゃこりゃあ……とりあえず救急車呼んじゃるわ」
「救急車? 呼ばなくていいよ? こいつもう死ぬから! あははははははぁ!」
「呼んで! 早く呼んでよ! 死んじゃうっうううぅぅ……」
「ええからそこどけえ!」
隣人は押し入って黒い受話器を持ち上げた。
彩花は笑い続け、莉奈は嗚咽をあげている。
次郎は彩花と莉奈を交互にキョロキョロと見ているだけだった。