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彩花の葛藤
「沸いたの? さっさとしてよね!」
先ほどまでの会話なんかどうでもよさそうに問い詰める莉奈。
「まだ沸いてるわけないじゃん……」
彩花でもそれぐらいは分かる。
「いつまで待たせる気ぃ? 本当にあんたよくこんな所に住んでられるわねぇ?」
「姉さんには関係ないし……」
「ふーん? そんな口きくんだぁ? いい度胸ねぇ?」
びくりと怯える彩花。おろおろと二人を見つめる次郎。
「まあいいわ。いくら一朗さんを知ってるからってあまり調子に乗らないことね?」
そう言って風呂場へと消えた。いつまでも裸でいるのが寒かったこともあるかも知れない。
「ごめんね……次郎……」
自分のせいで次郎に迷惑をかけている。彩花にだってそのぐらいの自覚はある。ならばどうするべきか……彩花は無意識に、台所の包丁を見つめていた。