莉奈の価値観
「ふぅん……それで次郎と同棲してるってわけね。てゆーか一朗さんの電話番号まで知ってるんだ。うまくやったもんね。いいなぁー。私も一朗さんに会いたいなぁー」
「やめた方がいいよ……」
「えー? なんでよ? あんただって一朗さん好きだったじゃん?」
「そ、それは……」
「違うの? だったらいいよね。教えてよ。一朗さんの番号。ほらほら教えなさいよ。いいでしょー?」
「教えたら……出ていってくれる?」
「はぁ!? あんた姉に向かって何言ってんの!? 生意気よ?」
「こ、ここ、次郎の家だから……」
「それが何? 次郎なんてうちの使用人だったんじゃん? だったら主人の私がここにいて何が悪いっての?」
「そ、それは……」
「だいたいあんたもあんたよ? 藤崎家の娘がこぉーんな狭い家に住んでさ。恥ずかしくないの? いつまでこんな所にいる気?」
「いつ……まで……?」
「そーよ。底辺カス男と火遊びすんのはいいけどさー。適当なところで区切りをつけないと一生底辺暮らしすることになるわよ?」
「てい……へん?」
「そーよ。底辺ドクズよ。世の中の大半は役に立つ底辺と役に立たないド底辺なのよ? 一朗さんみたいな一流の男なんてそうそういないの。あんたもそろそろ現実見たら?」
「現実……」
ぎぎぃ……
錆びれた音とともにドアが開いた。