電話番の疲労
「ああ、サンショクの粭島ね。明後日の土生に金網が10ね。問題ないよ。教えてないのによく分かったねぇ。」
「え、何が?」
「いつ、どこに、何を、いくつ。こういった数字は1つ間違えただけで仕事が台無しなのさ。ちなみに今回は粭島もボケてるね。金網が余分に要るならそれを打ち込むアンカーも余分にいるもんさ。アンカーだなんて聞いちゃあいないんだろ?」
「う、うん。らすが10って言ってた……」
「分かったよ。そんじゃ今日は帰っていいよ。次郎を待っても6時過ぎるだろうからねぇ。さっさと帰って料理でも作っておいてやんな」
「う、うん! お、お先に……お疲れ様でした!」
「はいお疲れ。また明日ねぇ」
来る時は次郎の自転車の後ろに乗っていたため、先に帰る時は歩きだ。途中のスーパーで買い物をすることを考えると、むしろ一人の方が都合がいいのかも知れない。しかし、彩花はぐったりと疲れていた。ほとんど電話番以外に何もしていないのに。相当に神経をすり減らしたらしい。
昼に作った煮物、美砂によれば本当はもう1時間ぐらい煮込んだ方がいいらしい。ならば今から作って煮込めば、次郎が帰ってくるのにちょうどいい。スーパーを出た彩花はそんなことを考えながら歩いていた。どうやらいい気分転換になったようだ。
「見ーつけた。彩花こんなところに居たんだ?」
若い女が声をかけてきた。