11/156
昼休み
「おめぇ何もねぇんだろ? これ食えや!」
偉丈夫から渡されたのは弁当箱だった。きっと彼の妻が作った昼食だろう。彼は次郎に弁当箱を渡すと線路を歩いてどこかへ行ってしまった。
線路脇に座り込み皆と弁当を食べる次郎。庭仕事で肉体労働には慣れていたはずなのだが、それとは別次元の疲労に箸が進まない。だが、一口二口と食べると簡単に食欲に火がついてしまい、たちまち食べ尽くしてしまった。
「おめー明日からは弁当用意しとけや?」
「頭も車まで戻って飯食いに行くなぁ面倒なけぇなあ」
「しかし兄ちゃん若ぇのによぉやるで。腰ぃ痛ぉねぇか?」
「いんや手首じゃねぇ?」
「やっぱ肩ったい?」
正解は手首、次に足だった。手首は痛くて堪らないし、足はぷるぷると震える有様だった。そしていつしか束の間の夢の世界へと旅立っていた。
「おっしゃあ! やるぜぇ!」
いつの間にか頭と呼ばれる偉丈夫は戻ってきていた。大声に起こされた次郎は目の前の崖を見て、自分の状況を思い出していた。体はあちこちが痛い。しかし、心はやけに高揚していた。