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次郎霧中
風呂に入れてやることこそできなかったものの、髪の毛以外はそれなりにきれいに汚れを拭き取ることができた。
それから次郎は彩花を抱きかかえて、布団に移動した。
彩花の裸体を見て、体は反応している。次郎とて木石ではないのだから。だが、どうしていいか分からない。彩花から何も言われてないのだから。
どこどこを舐めろ、もっと強く、上下に、いや左右に。もっと舌に力を入れろ、入れすぎだ、もっと触れるか触れない程度の力加減で……
腰を動かせ、もっと早く、もっと奥まで、前後だけでなく上下にも動け。動きが単調すぎる、もっと変化を持たせろ、まだだ、終わるな、もっと動け……
寝息を立てる彩花を見て、次郎は藤崎家にいたころ彩花に言われたことを思い出していた。だが今は何も言われていない。高まる何かを次郎は身の内に抱えながら二人分の夕食作りを再開した。
なお、当然ながら彩花は朝まで目を覚ますことはなく、彼女の分の夕食は次郎の朝食となった。