彩花の仕事
「やーれやれ。どうにか終わったのぉ。おっしゃあ帰るでぇ」
次郎のミスを修正し、打ったあとのコンクリート表面をコテでならしたら終了だ。ここから数日ほど置いてコンクリートが完全に乾いたら次の段階へと移れるわけだ。
時刻はまだ三時前。やるべきことが終わればすぐ帰れるのがこの職場のいいところだ。ここから事務所に帰っても三時半過ぎといったところだろう。
他の者はこれから飲みに行ったりパチンコに行ったりするのだろうが、次郎は何も考えてなかった。おそらく、事務所に着いた時点で今日は普段より早いということに気付くだろう。
「次郎……おかえり」
事務所には彩花がいた。彩花は額に汗して倉庫の整理を行なっていた。先日の作業がまだ終わってないため続きをしているのだ。
同僚たちは車から道具をおろすと帰っていく。
「私はまだやる事があるから先に帰ってて」
彩花が本心からそう思っているのかは分からない。本当は次郎に手伝って欲しかったのかも知れない。だが、彩花にそう言われたなら普通に帰るのが次郎だ。帰りに夕飯の買い物をしよう。その程度のことは考えたようだ。
他には、帰ったら風呂に入ろうか、彩花も入るだろうから湯は抜かない方がいい、とも考えたかも知れない。どうせ三日ぐらいは同じ湯を使うくせに。