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  作者: 暮伊豆
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惜別

一方の彩花だが、そうは言ったものの不安そうな顔で一朗を見上げる。


「本当にごめんなさい。私、自分のことしか考えてなくて……次郎が言いなりになるのがおもしろくて……どんな罰でも受けます……警察でも……」


「彩花ちゃん。」


一朗は子どもをあやすような表情で彩花の頭にぽんと手をおいた。


「さっきは健二の手前ああ言ったが、君のことは何とも思っていない。もうしっかり反省したように見えるし、美砂さんからも聞いている。これからも二朗、いや次郎と一緒にいてやってくれるかい?」


「え……私……次郎といていいんですか……? 瀧川家に連れて帰るんじゃ……」


彩花の頭からおろした手がトラウザーズのポケットへと移動した。紳士服に詳しくない彩花ですら知っている。ロンドンはサヴィルロウ仕立てのスーツ。隙のない一朗にぴったりの装い。つい見惚れてしまう彩花だったが……


「さっき言ったね。次郎は一人でもまっすぐに生きている。そこに今さら僕の助けなんか必要ないんだよ。次郎には次郎の生き方がある。それを邪魔する気はないよ」


「そうです……よね。じゃ、じゃあ私はこのまま次郎と一緒に……いいんですか?」


「いいとも。と言いたいところだが、それを決めるのは僕じゃない。やっぱり次郎だろうね。あいつのこと、よろしく頼むよ」


すらりとした長身が不意に折れた。一朗が頭を下げたのだ。


「あ、あの、は、はい! が、がんばります!」


彩花だって藤崎家の三女だ。一朗が下げた頭の重みが分からないはずがない。意図せずして狼狽してしまうほどに。


「よし。それじゃあ帰ろうか。女の子がいつまでもこんな所にいるもんじゃないからね」


「え、ええ、そ、そうですね!」


一朗がさっと手を挙げると、見慣れぬ車が近付いてきた。彩花は知らないがアストン・マーティンDB4ザガートだ。お洒落な一朗とはほど遠い……派手な紫色に塗装されていた。

挿絵(By みてみん)

瀧川 一朗©︎りすこ氏

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普段はこんなのを書いてます。
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― 新着の感想 ―
[一言] 一郎カッコいい! なのに紫……(笑)
[良い点] まずは100話到達おめでとうございます! ……といっても、巨匠には大した話数でもない気がしますが。(笑) しかし一朗、車まで完全にえげれす仕様ですね……! まあ、紫は太古より洋の東西を問…
[良い点] おにいちゃん。じゃなくて一朗さん恰好ええ。 彩花ちゃん許してもらったね。一生懸命に謝ったから。 きっとその場での彩花ちゃんの態度でどんなでも対応を変えたと思う。 格好良いのに、紫かよ!深緑…
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