グロ耐性
魔力造形練習が終わると次は人間の肉体の仕組みを調べることになった。人間は生きたまま小屋の奥に鎖で繋がれており俺が近づくと皆怯えた表情で震えていた。
「彼らは皆、犯罪を起こして死刑にされる者達だよ。私はこの王国の死刑囚をここで君に解体すために連れてきたんだ。君は人間が死ぬのは我慢できるけどグロいのとかダメでしょ?そのために人間を解体して人間の肉体の仕組みを知る事!それが大事だよ。」
それは分かっている。暗殺者として生きると決めた時からいつかその時が来ると思っていた。
「ああ、わかった。覚悟を決める。」
「その意気だよ。じゃあ行くよ。目をつぶらないでちゃんと現実を受け止めてね。」
彼女は死刑囚の1人である二十代前半の赤髪の男性をビリヤード台程の木の机に乗せ、四肢を固定する。
「ロックス・ドリアー、23歳、持病なし、罪状は連続殺人、被害者は女性のみ、かぁ〜。君は全女性の敵だね。」
手を震わせながら言う。こちらから見てもかなり怒っているように見える。
「じゃあ、アル君。まずは彼の魂を喰らって。首を落としていいから。」
「っ!んんっーーん!」
「うるさいよ君。それだけの罪を犯したんだ。死をもって償いなさい。」
彼女がこちらを目配せをしてきたので俺は魔力造形により一本の剣を作った。なんでも東方の方にある剣で「カタナ」と言うものを真似てみたのだがかなり振りやすく使いやすかった。ちなみに名前をつけておいた方が即座にイメージできるとの事だったので【魔刀薄氷】と名付けた。薄氷の如く薄さに透明度を持つからだ。
そんなことはどうでもいいのだ。この殺人鬼を殺すことが第一優先なのだから。俺は一歩、また一歩とロックス・ドリアーに近づく。
「………覚悟は?」
「あぁ。出来てる!」
バシュッ!コロンコロン。
あぁ俺は殺したんだな。今までは盗賊など襲われた時に必死になって殺していたが。冷静な時に人を殺すのはためらわれる。
「暗殺者でも大事だから言っておくけどね。
殺しても何も思わなくなったら人間じゃないよもう。」
あぁそうだな。彼女の言葉に納得しながら返り血に塗れた上着を脱ぐ。あとは彼女の解剖を見て人間の肉体構造を知るだけだ。もう彼女は胸のあたりから下半身までメスで切り開いている。ウッ!胃の中のものが口まで込み上げてくる。グロテスクすぎだ。何が悲しくて人間の内臓を見なけりゃならんのだ。
「アル君!これが口から直接繋がってる食道、胃、小腸、大腸。毒を飲ませて溶けるのは胃の場合が多いけど全てがそうとは限らない。口の中ですぐに溶けるものもあれば、下剤のように腸まで行くものもある。そこらへんは君のさじ加減だ。うん?来ないのかい? あぁ、やはり耐えられなかったか。仕方がないしそうでなきゃ人として終わっている。」
「まだまだこれからもやるんだよ。君自体が触り確認して仕事に使えるようにしないと。それに君なら今殺した死刑囚のステータスを奪えるだろう?」
そう言えばそうだった。魂を喰らってからステータスを選ぶのは実は殺してから一時間くらいまでの間なのだ。だからまだ選んでない。どれどれ?
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【名前】ロックス・ドリアー
【種族】人間【性別】男性【年齢】23
【職業】殺人鬼
【称号】全女性の敵 モテない男
【レベル】24
【体力】2200/2200
【魔力】1300/1300
【スキル】包丁術
【魔法】火魔法
【装備】拘束具
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なるほど、火魔法しかいいのないじゃん。モテない男とかいらなすぎるだろ。じゃあ火魔法貰っていくよ。
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【名前】アルトリア
【種族】人間【性別】男性【年齢】16
【職業】暗殺者
【称号】Dランク冒険者 操られる者 魔物の天敵 魂を喰らう者 理を否定する者
【レベル】9999+
【体力】749925/749925
【魔力】499950/499950
【スキル】魔力造形 地獄召喚 殺気 威圧 精神耐性
【魔法】影魔法 闇魔法 火魔法
【装備】喰魂の指輪 万象天眼 空間の耳飾り
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おおぉーーー!精神耐性、だとっ!あのグロテスクなのを我慢したら精神耐性つくとかマジ最高だな。これは仕事にかなり有利に働くな。さて次は誰だ?
「次はこいつだよ。ミネルヴァ・リスト34歳、持病なし、孤児院で子供を殺しまくってたやつだね。ステータス見てくれる?」
孤児院運営ってことは神官か。神官が何やってんだよ。俺も孤児院育ちだったけど優しい先生だったぞ。親の記憶は曖昧だが泣きながらなんか謝ってた気がする。
「ごめんね、ごめんね、ーーーーのせいで、私のーーーーせいで、ごめんね、いつか迎えに行くから。」
って言ってたのを鮮明に覚えている。
それよりステータスだ。
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【名前】ミネルヴァ・リスト
【種族】人間【性別】男性【年齢】34
【職業】神官
【称号】ロリコン 殺人鬼 変態
【レベル】32
【体力】1100/1100
【魔力】5200/5200
【スキル】緊縛術 杖術
【魔法】光魔法
【装備】拘束具
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うわぁ称号ロリコンに変態とかやばいだろ、きもいわこいつ。何?緊縛術って。誰が使うねん!使えんのは光魔法だけだな
「自分で解剖してね。そのステータスなら光魔法が一番いいと思うよ」
やるべきことを終えた俺はその後も解剖を続けた。そして最後の1人になった時、ステータスを確認したところ色々と増えていた。
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【名前】アルトリア
【種族】人間?【性別】男性【年齢】16
【職業】暗殺者
【称号】Dランク冒険者 操られる者 魔物の天敵 魂を喰らう者 理を否定する者 執行者
【レベル】9999+
【体力】749925/749925
【魔力】593000/593000
【スキル】魔力造形 地獄召喚 殺気 威圧 精神耐性 回避 大剣術 弓術 槍術 自己再生 短剣術 魔力自動回復 礼儀所作
【魔法】影魔法 闇魔法 火魔法 光魔法 使役魔法 死霊魔法
【装備】喰魂の指輪 万象天眼 空間の耳飾り
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かなり進んだ。使役魔法を使えばモンスターを使えるし、死霊魔法なら、アンデットを作り出せる。これを見せるとかなり呆れられた。もう人類最強だと。
そして最後がこいつ。ドルクエ・サージャス85歳、人体実験を繰り返して軍を追放されたやつだ。そしてこいつのステータスがやばかった。
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【名前】ドルクエ・サージャス
【種族】人間【性別】男性【年齢】85
【職業】魔導士
【称号】マッドサイエンティスト 大魔導士
【レベル】65
【体力】500/500
【魔力】10000/10000
【スキル】魔力収集
【魔法】火魔法 水魔法 風魔法 土魔法
【固有魔術】狂気の行進曲
【装備】拘束具
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「おいっ!固有魔術ってなんなんだ?初めて見たぞ。」
「え?知らないの?固有魔術っていうのはかなり優れた魔道士しか使えない、オリジナルの魔法だよ。ただこれは、いきなり頭の中に浮かんでくるらしいからあまり詳しくわからないけど、使用者以外使えない珍しいやつだよ。」
「なるほど、これを使えばかなり強くなれると。いいじゃんこいつ。なんで魔法じゃないんだ?」
「魔法とは完全に異なるんだよ。固有魔術は人それぞれだから、魔法のように決まった火の玉が飛んできたりとかじゃなくてその人の魂の本質を写すらしいよ」
「なんじゃそりゃ?まぁいいか、とりあえずもらうぞお前の固有魔術!」
グシャッ!!
おぉこの固有魔術の使い方が頭の中に入ってくる。なるほどこう使うのか面白い。今まで殺してきたものを再現して魔力が尽きぬ限り顕現し続けるとは。
ありがたく使わせてもらおう。