サブ2
ハンス視点
俺には、幼馴染がいる。女の幼馴染が。
「ハンスー。タイツ脱がせてぇ」
「お前なぁ」
昔、聞かれたことがある。
『二人は付き合っているの?』
俺たちは、こう答えた。
「「いや、兄妹みたいなもん」」
今でも、その関係は変わらない。慣れた手つきで、ニーナのタイツをスルスルと脱がす俺は、まあ、モテる。というか、この街で俺を知らぬ者はいないんじゃないか。
それにしても、女のタイツを脱がしていて、ここまでそそられないもんねぇ。いや、それには、こいつの呪いのせいもあるんだから、しょうがないんだろうけど。
ニーナは、俺にとって大切な妹みたいなもんで、ニーナになら、なんでも気楽に話せる。それは、ニーナが飾らずに、ずっと地でいるからだ。というのも、存在感がないから、気にされる相手もいずに、そうならざるを得なかったのだろう。見てもらえると相手もいないで、自分を飾る馬鹿はいない。
「間違っても他の男に頼むなよ?誘ってると勘違いされるぞ」
「分かってるよ。だいたい私を女と意識する奴がいたら見てみたいわ」
「あー、いるかもしんないじゃん?」
「そもそも存在さえ、意識されないのに?」
「どんまい」
「くっそ、早く相手見つけてエロいことしてー」
「……お前、一応女なんだから」
「うるせぇ。ハンスみたいにエロエロ生活している奴には分かるか!だいたい、なんだこの家は!女物が多すぎる!」
「いや、別れた女が……」
エロエロ生活をしている、と言われて否定は出来ないし、誠実かと言われると辛いところもある。まあ、それだけ俺がモテてしまうということもあるが。男と違って、女は所有権を主張したがる。前の女がどうのこうの。あいつと私、どっちが大切なの?とか、うんざりで、すぐに別れたり。
「女ねぇ。それより、どうなのよ」
「何が?」
「何って。そりゃ、話題の聖騎士様のことよ!どう?エッチした?聖騎士様イケメンなんでしょ?食った?食えた?」
「いや、リヒャルトはちょっと俺のタイプじゃない。もっと、子猫ちゃんみたいなタイプが好きだし」
「っかー!分かってない!分かってないわ!ガチムチ受けは至宝よ!」
「リヒャルト、ガチムチじゃねぇから」
そう考えると、男の方がやはり楽だ。考え方も似てるし、女より濃いプレイも出来る。他の国では、男性同士の結婚が禁止されたとか言う話も聞いたが、この国の上流階級では、男の愛人の一人や二人囲っていても当然と言うくらい、男同士は受け入れられている。
(そもそも、俺が男と付き合いだしたのって、俺が男といるとニーナが喜ぶからだったよな)
男との初めての夜を終えた後、お尻大丈夫?と言われた時は、間違った事実を覚えていることにゾッとして、俺は男役だから今も、今後も誰かに抱かれる覚えはないと説教してやった。
「あーあ、早く私を見つけてくれる王子様は現れねーかな。もう、見つけてくれた瞬間、襲ってくれて構わないのに」
「お前、王子様は夢見すぎだろ」
「じゃあ、モブ男でもいいとして、練習としてちょっと咥えさせてくんない?」
「断る」
「えー、下半身ゆるゆるのくせに、なんでそこはきっちりしてるんだよぉ」
「お前には勃つ気がしない」
「ちぇっ」
ニーナは、目立たない故に自称大胆な女になった。ただ、存在感がなさ過ぎて、分からないが。確かに、他の女が来ていたら、さぞ扇情的だろう。でも、ニーナだ。
何をやっても、それが?としか思えない。
こいつの将来は大丈夫だろうか。一生セックスが出来ないことを嘆いて、風俗店に行かないか心配だ。何か病気を貰ったらまずいし。そんなことになるのならば、俺が処女を食ってやればいいと思うのだが、やはり勃たない。女としての魅力がゼロだし、例え精力剤を使って無理やり勃たせても、兄妹を犯すのは、心情的にちょっと無理だ。
深夜、変な夢を見た。めちゃくちゃエロい女に身体中を弄られる夢だ。普段なら速攻で頂くが、いかんせん眠すぎて勃たない。
「怒った?」
女が上目づかいでこちらを見てきて、クスリ、と笑う。
(あー、エロい)
「んー、……はよ寝な」
ちゅ、とキスをしたら、なんだかその感覚があったような気がして可笑しかった。その後も、その女の夢を見続けて、朝、起きたら、朝勃ちしていて困った。処理してもいいが、ニーナがいる。
俺が自慰をし始めたら、ニーナなら小説の参考にするから詳しく、とジロジロと見てくるだろう。最悪、精液をサンプルとして取られるかもしれない。流石に、嫌だ。しごいて、と主張してくる息子を無視して、朝食を作るためにダイニングに向かう。
すると、朝が苦手なニーナの癖にもう起きていて、ぼーっとしていた。
「おっはー」
「おっす」
「私、帰るわ」
「は、もう?まだ、朝の7時だぞ」
「……仕事思い出した」
「あ、そう。じゃあ、俺は新手のかわい子ちゃんナンパしに外に繰り出すか」
なんだ。ニーナゆっくり話すの結構楽しみにしていたのに。残念だ。しょうがないから、この朝勃ちを処理する相手を見つけるとしよう。
「あ、そいえば、リヒャルト何故かお前のこと知ってたぞ。フルネームで」
「聖騎士様が!?」
「ああ、お前の名前だしたら、それってニーナ・ハヤシさんの事ですかって」
「え、どーゆーこと!?なんで!?なんで!?まさか、聖騎士様が運命の王子様ってこと?それとも、聖騎士として呪いをかけられた私を知ってるってこと?」
「さあ、知らね。運命の王子様だといいな」
「棒読みで言うのやめろ」
「なんか、ラッセルの森で女を見なかったかみたいな事を聞かれて」
「……ああ、そう言うこと」
「なんだ」
「その聖騎士様って、その魔女狩りとかしそうな人?」
「いや、偏見はないって言ってたけど」
「聖騎士様って良い人なんだよね?」
「ああ、あんな良い奴稀だよ」
こんなにしつこく聞くニーナは、初めて見る。人に相手にされない代わりに、人に関心があまりないニーナがリヒャルトに関心を持つ。良いことじゃないか。なんか奇跡が起こって、ニーナとリヒャルトが付き合ったらこんな良いことないかもしれない。
「お前さ、最近リヒャルトとよく話してるよな」
「まぁね」
「何、漸く運命の聖騎士様と出会っちゃった系か?」
「うん。まあ、そうだったら良かったんだけど」
「何!?惚れたの?」
「違うわ。あまりにもリヒャルトさんが私の理想だから」
「あー、リヒャルト確かに王子様、って感じだよな」
ニーナが遠い目をしている。もしかしたら、本気なのかもしれない。これは、本気でアドバイスをしてやらないと。
「リヒャルトは、真面目だからなぁ。身体だけの関係とか受け入れないだろうし」
「それなぁ。しかも、リヒャルトさんのアレってハンスより大きそうだし、初心者向きではないな」
「おい、待て!それはおかしい。なんで俺の息子がリヒャルト以下なんだよ!?」
「だって、男のアレって背の高さとか体格とかで決まるんでしょ。リヒャルトさん、全部あんたより上回ってるし」
「ちげぇわ!男のアレは背の高さじゃねぇし、そもそも俺は着痩せするだけなの」
「ふーん。まあ、そういうことにしとくけど」
「だい俺の息子は普通より大きさだし、男の価値は大きさじゃなくてテクニックだろ」
「はいはい」
「でも、まあ、結局。お前が、どうしてもリヒャルトがいいってなら手伝ってやってもいいぞ」
「うわーありがとう。ハンスさんさいこー」
「心にもないことを……」
「まあ、今日のとこはいいじゃん?寝よう?」
髪を掻き分けて、前屈みでニーナが見てくる。他の女がやったらすぐにでも押し倒すのにニーナがやると一気に残念になる。
「えー、俺、まだ話したりねぇんだけど」
「ちぇっ」
ニーナが機嫌を損ねている。しょうがない。こんな時は、ニーナの機嫌が良くなる情報を教えてやるか。
「なんだよ、そういやさ、俺、新しい彼氏出来たんだけど」
「何、その話詳しく!」
「恋人出来たならもう、泊まっちゃ駄目だよね」
「えー、良くね?そんくらい俺の彼氏なら気にしないって。そもそもお前相手に勃たないし」
「んまあ、そっか!」
これからも、この関係は変わらないんだと思っていた。