オモイデ
これは作者の価値観を元にした、完全なフィクションです。
普段の思いがそのまま文章となっています。
他の連載作品などとの関係性も無く、ただの自己満足となっております。
それでも良いという方のみ、お読みする事をお勧めします。
白い光が目に飛びこむ。
「朝か……」
温まった布団から出るのは誰にとっても至難の業だろう。
布団を少し持ち上げただけなのに、ひんやりとした空気が中に入り込んでくる。まだぬくぬくとしていたいものだが、鼻先がどうしても冷える。心の中では布団の中に顔をうずめてしまいたい気持ちでいっぱいだが、何より腹が減った。
「うぅ……起きるか……」
仕方なく重い体を起き上がらせて、ベッドから足を降ろす。カーテンの無い小窓から入ってくるやわらかな光が微弱だが僕の体を暖めてくれる。
ふと視線を動かすと、青いカーテンの隙間から、やはり白い光が見え隠れしていた。少し生地の厚いカーテンを開けると、透けたレースのカーテンが揺れた。
レースカーテンも開け、窓を開ける。まだ夜の匂いを残したままの冷たい風が優しく頬をさする。丘の上に建てられたこの家の、更に二階にある寝室からは、とても美しい眺めが広がっていた。
眼下には赤い煉瓦の屋根が並んでおり、その間からちらほらと石畳が顔を覗かせている。あちらこちらにある緑は、僅かな隙間に生えた草木や、石煉瓦に生える苔達である。
そこから少し目をあげれば、きらきらと光る青い海が佇んでいる。朝日に照らされて、少しだけ上に膨らんだ水平線を銀に輝かせている。
空では雲と鳥とが戯れている。
「はぁ……」
毎日この景色を見る度に感嘆の溜息が出てしまう。
これが決め手でこの家を選んだのではあるが。
さて、食事を取るとしよう。
なかなかどうしてかはわからないが、この街の住宅は複雑な構造をしている。
起伏の激しいこの土地に、無理矢理街をつくったのかは知らないが、どうにも坂が多い。おかげで家の中も階段だらけだ。
石造りの階段を降りながら、窓から射しこむ朝日に白く光る掲示板を横目に見る。今日は何か面白いことは無いか、と。毎度特に面白いものは無いのだが、これは人の性というものなのか、目に付くと気がつけば掲示板を覗いてしまう。
その中身は大抵新聞や回覧板のようなものなのだが、たまに何かの宣伝が貼ってあったりする。
そうして階段を降り、戸を開けて、食事を取るために台所へと向かった。
木漏れ日が揺れる。
やわらかな紙の上を、ゆらり、ゆらりと木漏れ日がゆれる。
腰かけた木の椅子は質素なものだが、情景も相まって優雅な雰囲気をまとっている。
前方には今にもさわさわと揺れる音が聴こえてきそうなほど心地よく揺れる草花が、切なく空を眺めている。遠くに見える山をどこか懐かしむような眼差しを、その背中に佇ませながら。
図書館の片隅。読書スペース。
どこにでもあるような木の下に、ただ椅子が置かれているだけ。
ただそれだけなのだが、なんとも気持ちが良い。
どこかで川でも流れているのか、心地の良い水の音が心を落ち着かせてくれる。
そこで、太陽に暖められながら、ずっと本を読むのが僕の楽しみだった。
記憶というものは曖昧なもので。
しかし記憶というものは鮮明でもある。
物や実物があると、意外と泣けてしまう、なんてことも、よくある事だろう。
記憶だけに残しておくのも乙なものだが、やはり実物を見て思い出に浸るのも趣がある。
記憶は、消さずに残しておきたいものだ。
この作品を読んで頂き、ありがとうございます。
話に全く脈絡が無いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
その通りです。
作者が思いついたままに、作者の価値観で執筆させて頂きました。
たとえただのセーブデータだとしても、それだけで懐かんで泣けるものですよね。
記憶というものは、切なく儚いものですね。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。