こっちの世界への旅立ち
こんにちは音羽泉夢です。この度初投稿させていただきました。まだまだ未熟者ですと言い訳を言うのはどうかと思いますがミスなどがあると思います。よろしくお願い致します
2017年10月14日 16:22分
「そうそう、そうやって硫黄と混ぜりゃ黒色火薬の完成だぞ! それと、あと少しでこの白鉄鉱とチャートで火打石の完成だな! いやー、久々に白鉄鉱なんか見たぞ」
西暦700年辺りで作られた火薬は、今や高校生がとても簡単に作れるほどに簡易的な火薬だった。
「そういえば、なんで火薬なんか作ろうと思ったんだ? 将来就きたい仕事に関係あったりするのか?」
「そうなんですよね! 僕の将来の夢は花火職人なんですよ!」
「そうなのか……」
「でもテルミット反応とか全然分かんないし!!」
「全く……。つまりだ、テルミット反応はな、例えば金属酸化物と金属アルミニウムとの粉末混合物とかを燃やしたりする。するとアルミニウムは酸化物を還元しながら高温を発生させてな、純粋な金属を手に入れることができるわけだ。ここまではいいか? 他にも、金属だけじゃなくアルミニウムの粉末と氷の微粒子を混合してもテルミット反応は起きる。まぁ、金属の方が絶対にいいがな。特に鉄粉なんかは、川とか学校の砂場とかに行きゃ取り放題なわけだしな」
「ほぇ~……また教えてくださってありがとうございます!翔瑠さん!」
「お前名前間違えてんじゃねぇよ!俺の名前は翔瑠! かけると読んで翔瑠だぞ!」
翔瑠が名前を間違えられたことに憤っていると、今度は別の人物が話しかけてきた。
「翔瑠さ〜ん見てくださいよ〜」
「……お前、それわざとやってるだろ……。まあいいや、それで?」
翔瑠に話しかけてきた少年の名は賢一。
「やっと成功したんですよ、自分がほぼ一から作ったモルタル!!」
「そ、そうか……おめでとさん……」
(((いや、モルタルは自慢にならないだろ)))
翔瑠に渾身のドヤ顔で自慢する賢一に対して、周囲は視線も心中も冷ややかだ。
「そういや翔瑠さんは将来の夢のこと話してませんでしたけど、教えてくれますか?」
「……ああいいよ。俺の将来の夢は、世界中にありふれた謎の数々を解くことかな……。ま、当然簡単な話じゃないけどな。まず……」
「ん? なんだこれよくわかんねー石だな」
「(無視かよ……)ああ、それはチャートって言う石だ。中々硬くて便利なんだよ。後でこの黒色火薬を少し使って爆発の実験でもやろうと思ってな」
「あ、やっべ手が滑った」
賢一はあろうことか黒色火薬の上に火打ち石を滑り落とした。わずかだが点いた火花が黒色火薬を爆発させる。
「やばい!!」
翔瑠がとっさに叫んだ頃にはもう遅く、黒色火薬との距離が近かった翔瑠と賢一はあっけなく死亡した。
(ん? 俺死んだのか? 分からない。まるで金縛りの時みたいだ。どうなってんだ、皆が見てるな。あの位置なら賢一も一緒に爆発に巻き込まれたはずだ。あの爆発なら即死のはずだが……死んだ後はこうも意識が残ってるとはな。知らなかった。しっかし、まじで賢一の野郎ふざけてんな! 俺はまだ17だぞ! 青春を謳歌している花の男子高校生だぞ!? ……まぁ、今はいいか。なんか眠たくなってきたし、そろそろあの世に出発……)
「ん!? どこだここ」
意識はあり、体も動く。だが、周りが暗くて何も見えない。目が開いている感覚があるので目が閉じた状態ではないことはわかった。そして次の瞬間。
「君は生まれ変わりたい?」
どこからか、唐突に問いが投げかけられた。
「……ああ。生まれ変わりたい。できたらこの姿で、記憶も残して」
翔瑠はこの時、唐突な質問に対し、彼にしては珍しく何も考え無しに発言してしまった。しかし、彼はこの答えを後に最高のものだったと振り返る。
「わかった。じゃあ、またこっちの世界で会えたら会おう」
「こっち?? ……いやまぁ確かに、この姿と記憶を残したまま輪廻転生するなんて、物理的にも到底無理な話だったんだがな」
目をつぶり、やがて開ける。すると、そこにはこっちの世界とやらが目の前に広がっていた。
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