一話 「さてどうする」
短いです。
「さてどうする。」
皇遠矢は考えた。
パンデミックの初期は大学で迎え、なんとか家に帰り着き、
食料と水の確保をするべく近所のコンビニやスーパーを周り、
そこそこの物資を確保して家、マンションの六階に閉じこもっていた。
閉じこもって一週間、偶に悲鳴が聞こえてくるが、何も出来ずに見守ることしか出来ないので見るのも止めた。
テレビやラジオ、ネットや電話もまだ繋がっているが、何時まで持つか…
テレビチャンネルとラジオは数局沈黙した。ネットも繋がらないサイトが出てきている。
電話は運が良ければ繋がるが、あまり長時間(と言っても五分ぐらい)は無理。
やっぱり故郷に帰るべきか、このまま様子を見るか…
故郷に戻れるなら、伯父、母親の兄が助けてくれるだろう。
親族でも頭がおかしいと敬遠されているが、
俺を含め親戚の子供には優しく色々変わった事を教えてくれる面白いおじちゃんだった。
俺が大学に行くときも地震や災害対策の基本を教えてくれ、
水と食料は最低一週間、出来れば一か月は確保しろと口煩く言われた。
水道が生きてるなら、風呂桶に溜め、家中の鍋や空いているペットボトルに汲んでおけとかも言ってたな。
その水は鍋以外はトイレや体を拭くのに使えだったかな?
カセットコンロも、引っ越し前に災害持ち出し袋と一緒にプレゼントしてくれ苦笑した覚えがある。
母親や母方祖父母はそんな物邪魔だ。と、文句言ってたが。
父親は苦笑して義兄さんは心配症だからな。
と一応擁護してくれて、持って来れたがまだガスも使えるので役だってない。
「さてどうする?」
また声を出して呟くが一人だと結論が出ない。
今の状態なら二か月ぐらい引きこもったまま暮らせるが、ある程度、近所の情報は把握しとけ。
との、これまた伯父の薫陶が頭に流れた。
少し近所を偵察して脱出の足でもさがすか。
遠矢は状況によって家を出る決意を固めた。
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遠矢はまず、自分がいるマンションの全室を調べる事にした。
全室といっても明らかに閉じこもってるように見えて、鍵が掛かっている部屋には手を付けず、
ドアに鍵が掛かってない部屋をメインに見て回ったがあまり役に立つような物はない。
RPGゲームのようにはいかないか。
遠矢は苦笑しながらマンション中の家探しを続けた。
あまり成果はあがらなかった。
役に立ちそうな物は金属バットを二本と、かなり立派な柳刃包丁。
小学生の頃、伯父に見せてもらった剣鉈かと思ったが、台所にあったので包丁だろう。
これで最低限の武器が手に入った。マンション周りの捜索を始めれる。
主人公の皇遠矢は二十歳。
車の免許も持ってます。