十二話 遠矢 家に帰りゆっくり寝る。
少し長いです。
当社比二倍ぐらい(;^ω^)
朝、目覚めるとゾンビ映画の様に周囲が囲まれている。なんて事はなく、昨日から続く雨が降っている景色が見え、その先に微かに幾本かの煙が上がっているのが見える。
まあ、囲まれていたとしても、下は川。
最悪でも飛び込んで逃げれる所に車を停めている。
これも伯父にしつこく言われた。
「こんな状況になれば車内の方が安全なのは理解出来るな?だが寝ている間に囲まれて逃げる事が出来なければ意味がない。高い建物でも下を塞がれたら最後は自死か飢えて死ぬかだ。最悪、身一つでも逃げ延びる逃走経路の確保は忘れるな。」
この言葉はマニュアルノートにも度々書いてある。
さっさと朝飯を食い早く帰る事にする。気は重いが…
そこそこの雨足の中、車を出し宇治川を渡り桂川の中心ぐらいで停まる。
北、元向日市と言うべきか。一面瓦礫で景色がはるか先まで見える様になっている。
所々、微かに上がっている煙が雨に曇る光景に凄惨さを滲ませている。
その光景の中、かなりの黒い影がさ迷い歩いている。
爆撃音や破壊音で集まってきているのか…
ほんの少し眺めて名神高速を確認する。
ここから北に行く方向は完全に破壊されて所々橋桁だけが残っているぐらいだ。
その中をかなりの人影が歩いている。雨の中を…
昨日の大津SAと何が違うのだろう?
ふと疑問が思い浮かんだが取り敢えず忘れる事にして帰る事にする。
来た道、国道171号線を戻り危険なくマンションまで帰り着く。
アプリを起動して、今下に着いた。と打ち、
リュックと刀と和弓、缶飲料を12本持って部屋に向かう。
六階まで上がり慎重に廊下を覗くと、まだ射撃練習には出てきていない。
扉に鍵を差し込みゆっくり回し開け、素早く中に入り込み一息つく。
「ふ~…やっと帰って来たな…」
取り敢えず奥に行き隣りの部屋に合図を送る。
ベランダの鍵を開けリビングで寛ぎモードに入る。
少しすると三人娘が顔を見せた。
「遠矢お帰り!」「皇、無事で何より。」「皇君、お疲れ様でした。」
「ああ、ただいま…マジ疲れた。」
三人が椅子に座るのを待ち、弛緩した気持ちを整え切り出す。
「先ず、川田さん。道場は壊滅していて川田さんの祖父母と思わしき人の死亡を確認した。ご両親らしき人は見当たらなかった。これは祖父母さんらしき人の側にあった刀と弓。あと薙刀は下の車に置いてある。あとはこれだけ持ち出せた。」
最後にリビングにあった家族写真を渡す。
写真を受け取り「ありがとう。」と呟く川田さんに謝りつつ言う。
「済まない。もっと持ち出せれば良かったんだが、連れて行くつもりだったから家探しまでしていない。それで門から道場の写メや祖父母の遺体らしき人の写メを撮っているが見るか?」
「いや、これだけでも充分だ。写メはあとで見せてくれるか?」
「それは良いがあと一つ悪い報告がある。川田さんの家と云うか向日市自体が無くなった…」
「えっ?」「はっ…?」「何それ?」
海島さん、川田さん、メイが変な顔している。
そら、いきなり市が無くなったとか言われたら俺も同じ顔をするだろうな…
だが言わないと…
「昨日の早朝、桂駐屯地が放棄された。俺がたどり着いた時、すでに大規模な群体に囲まれていたから多分もっと前から放棄されるのが決まっていたと思う。それで大音量のサイレンを鳴らして駐屯地付近にゾンビを集めるだけ集めて爆撃したんだ。勿論、駐屯地内にいた人達はヘリやトラックで逃げ出した後だが。」
パソコンで地図を出し駐屯地からの放送も言い大体の範囲を教える。
「全体は流石に確認はしていないが、大山崎JCTから北は瓦礫と焦土になっていた。だから川田さんの家も多分無くなったと思う…だからそれだけしか持ち出していないのは申し訳なくて…」
俺が頭を下げ謝ると、慌てて声を掛けてくる。
「いや良いって皇!まだ親父達も望みがあるし、この写真と刀、弓に薙刀もあるんだろ?うちはほんとこれで充分だから。」
「そう言ってくれて助かるよ。次に海島さん。川田さんの前で言いにくいけど…」
そう言ってメモとアクセサリーを渡し言う。
「俺が見て来た感じでは大津駐屯地はまだまだ大丈夫そうだった。桂駐屯地からのトラックも受け入れた感じだったし。それ程はっきり確認できた訳じゃないけど、あそこなら琵琶湖に逃げれるからね。それとこれは俺の勘だけど、海島さん家は一般家庭より保護対象の上位に位置する家柄じゃない?なんとなくだけど。」
「う~ん…あたしにはわからないけど、お爺様の父、曽お爺様は軍の上の方に居たって言ってたけど…」
なるほど。あの落ち着いたメモの文字や屋内の様子から慌てて避難した気配が感じられなかったのは早い段階で退避していたからかな。
「そうなんだ。さて、海島さん。どうする?少しだけ危険だけど大津駐屯地までなら送り届けれる。勿論、川田さんとメイも駐屯地に行けば一応の安全を確保できる。海島さんの家族に頼れば他の人より少しだけ優遇される可能性もあるよ。」
「遠矢はどうするの?」
「俺は君達を送り届けたら、故郷に帰るよ。家も一度は確認したい。多分伯父は親族の家なんか見向きもしないだろうから話は聞けないだろうし。」
俺が伯父の話の所で苦笑するとメイが言ってくる。
「私は遠矢に家まで連れて行って貰う。やっぱり一度は家を確認してみたいから…ごめんねカヨ。」
「皇、ちょっと質問する。大体で良いから答えて。うちの家から逃げ出した場合、何処に逃げるのが一番生存率が高い?桂駐屯地や大津駐屯地にうちの両親がいると思うか?」
俺は川田さんの家付近の地図を画面上に出して、考えながら答える。
「う~ん…先ずどの時点で逃げ出したかに因るけど…門を突破されるまで家にいたと思う?」
「多分それは無い。爺ちゃんは道場を守りたかったから残ったんだと思うから。親父達は早めに避難をしたと思う。」
「じゃあ…パンデミック初期に逃げたとしよう。俺なら京都外環状線に出て国道24号線を南下、そのまま府道69号線も南下して大久保駐屯地に逃げ込む。これは自衛隊がある場所を把握している場合で、もし知らないとしたら…ここ、久御山JCTに腰を据える。勿論、食料と水を確保していればね。理由は周辺が良く見えて確認出来るし逃げる方向を多数選べるって感じで。でも俺がここに帰って来るとき京滋バイパスを通ったからここにはいない。では無いと思うけど京都方面に逃げた場合。気付いていると思うけど、このゾンビ共相手なら城はかなりの防御が出来る。無論自衛隊が守っているのが前提で。で、ここ二条城。北大手門と東大手門を守るだけでかなり固い。よしんば突破されても内堀の橋を落とせば立て籠もれる。まぁそうなれば、ヘリでの食料支援か脱出が前提での立て籠もりだけど。」
一息つき続ける。
「次は清水寺。清水の舞台の下、命綱を付けて隠れれば言う事ないだろ?水の確保は容易いから食料をどうするかが問題だけど。今言ったのも全部、俺の知識からの話だから当てにはできないよ。そもそもの川田さんのご両親の性格も知らないから、読みようもないし…あと桂駐屯地に居たとしても、大津に避難できたかも判らない。俺が確認したヘリでの脱出でも七方向ぐらいに飛んで行ったので大津に居るかは七分の一。ちょっと予想とかするには情報が足らない。」
「う~ん…一度行ってみて居なかったら違うところに行くのを繰り返すしかないか…」
「あ、多分それは無理だと思う。一度駐屯地に保護されたら、外には出れななくなると思って。」
「えっ!?なぜっ!?」「ホントに!?」「……ああ…そっか…」
海島さん、メイが驚き、川田さんは何かに思い至り苦々しく納得している。
「簡単に言うとゾンビを増やさない事、保護した人を見捨てない事、もしもの時の労働力を逃がしたくない事などが考えられる。まぁ一番考えられるのは単純に手が足りないから、そんな理由で簡単に出入りされたら秩序が保てないって事もあるかな。」
俺の説明に思い思いの表情を浮かべて考え込んでいる三人娘。
「済まないがちょっと一人でゆっくりさせてくれないか?帰って来て理解したが、外ではかなり神経を使ってたみたいだ。海島さん、ゆっくり考えてね。俺から言えるのは親族と一緒に暮らせる最後のチャンスだから。俺と一緒に居るよりは遥かに危険は少ない。」
最後に夕方まで寝るから危険がない限り起こさないでくれ。と言い沿えて別れた。
@@@@@
自然と目覚め時計を見ると15時40分だった。
寝始めたのが9時前だったので充分な二度寝を取った事になる。
いや昼寝かな?
そんな事を考えながらアプリで起きた事を書き込む。
肩を回し屈伸して身体の不調がないか確認していたら隣りから合図してきた。
返事を返しベランダ側の窓を開け軽く食い物を用意してリビングで待つ。
三人娘が入って来た。
「おはよう。ゆっくり寝れたよ。」
「大丈夫?」
「うん?そんなに顔色悪い?体調や身体に違和感とかないんだけどな。」
「ううん、普通にみえるから。思ったより寝ていたから気になった。」
「ああそうか。済まないな。」
「大丈夫ならいいよ。」
「じゃあ皆に聞くけど、アーチェリーの扱いと命中率はどんな感じ?」
「カヨも恵美も組み立てと一応の射撃は大丈夫。特に恵美は私達より上かも…」
「へぇ~やっぱり実家の道場で弓とか習っていたんだ?」
「うん…一通りやらされた。うちはいやだったんだけどな~」
「それで和弓の方を使うのか?一応20本ほどマシな矢を取ってきて車に積んでいるが。」
「そうそれよ!あの車キャンピングカーでしょ?お風呂とトイレが付いているの?」
「残念だけど風呂はないぞ。トイレは一応ある。しかしメイは乗るのはかなり後になるぞ。」
「なんでよ!?」
「海島さんを送る場合、メイと川田さんには残ってもらうし、全員で俺の実家に行くときも、俺とメイはあの車に乗らないで別行動だ。」
えらい頬を膨らませて俺を睨んでくる。
「皆であれに乗ればいいでしょ!」
「お前は俺が居ない時にノートのサバイバルマニュアルを見ていないのか…」
俺は呆れた声を出して言った。
絶句してソッポを向くメイに言う。
「もし全員であれに乗って移動してて、故障したときどうするんだ?近くに動かせる車が直ぐに見つかる保証が何処にある。もっと危機意識を持って考えてくれ。俺が大学まで迎えに行かなかったら今頃どうなっていたか想像してみろよ。」
俺は言い切って溜息ついた。
伯父から見たら俺もメイと変わらない無知なんだろうな…
「ごめん…チョット浮かれていたかも…」
素直に謝って来るメイ。
「これからはもっと考えて発言してくれ。勿論、俺の言葉が全部正しいって押し付けるつもりはないけど、あまり昔の常識を振りかざすなら俺はメイを置いて一人で消える。」
「あ~、チョットいいか?」
「いいよ川田さん。」
「矢が20本ほどあるってホント?」
「ああ。折れたり矢羽が荒れてたのは放置してきて、コマシに見える矢を手早く集めたので、使えるか見て判断してくれ。今すぐ見に行く?」
「うん。早めに確認しときたい。」
「良かったなメイ。今から乗れるぞ。動かさないけど。」
「それでも良いよ…」
@@@@@@@
俺達はマンションの駐車場に下りてきてキャンピングカーに乗り込む。
四トン車と云っても四人も乗り込むと手狭だ。
メイはあちこち開け閉めして海島さんと見学している。
俺と川田さんは薙刀と弓矢をテーブルの上に並べ、見比べている。
「皇、なかなかの審美眼を持っているな。全部使用に耐えれる。」
「ああ良かった。矢羽だけ見て持とうとしたら折れた矢があったんで、一応、鏃と矢が折れていないかを調べてから集めた。」
「うん、これとアーチェリー、刀と薙刀。遠中近での戦いが出来る。皇、戦いならうちに任せろ。」
「女性に任すのは男としてアレだけど、戦力として期待させて貰うよ。」
俺は苦笑まじりに言った。
「じゃあ早速だけど警護してくれるかな?エクストレイルの物資をこの車に載せるから。メイと海島さんも手伝って。言うまでもないけど外では声を出さない様に。」
エクストレイルの物資を七割方キャンピングカーに乗せ換え、マンションの部屋に戻る。
夕食を皆で食べ少しの話をしてからその日は早めの就寝に入る。
明日はどうするか?
かなり寝たはずなのに、すぐに意識を失い朝までぐっすり寝た。
遅くなりました。
今話の投稿は七日を予定していました。
つまり今月は二話投稿の予定だったんです。
が、あの大雨の影響で次話が書けなくなりまして(´・ω・`)
まぁ、月一を何とか続けて行きます。
ですがこの続きは未定で<(_ _)>
裏は月末に間に合う様に頑張ります。
チートは来月20日までに。
休みが取れれば繰り上がり投稿します。




