プロローグ
男はゴミ袋を、庭にある簡易焼却炉に放り込み、
火が付いたのを確認してから杖を突きつつ門から出て、家の前の道路で大きく体を伸ばした。
初夏の6月でも、午後8時では辺りは真っ暗闇、しかし男は何も気にせず柔軟体操をしだした。
男はこの1週間、家に閉じこもってDVDの一気見をしながらネットゲームで遊んでいた。
だからここ最近の情報は何も知らない。世界があり得ない速度で崩壊していく、前兆の事件を。
微かな音が男の耳に届いた、靴でアスファルトを擦る微かな音。
男は体操を続けながら音源の出処を探した。
段々近づいてきた、耳を澄ませなくても聞こえる足音。
どうやら足を引き摺っているらしい。
男はやっと体操を止め暗闇をみつめた。
「むっ」
男は首を傾げた。
足音が躊躇いもなく男のいるほうに向かってきたから。
男が今いる道路は、行き止まりの私道で今夜は来客の予定もない。
それに何より真っ暗闇の中を歩いている事が異常だ。
ここでやっと男は頭につけていたヘッドライトのスイッチをいれた。
「ぬっ」
あり得ないモノが照らし出された。
男を眉をひそめ声をかけた。
無駄と思いながら・・・。
「そこで止まれ」
しかし足を引き摺っている[何か]は、止まらずじりじりと近づいてくる。
ライトに照らされた[何か]は人の形はしてる。
しかし人ではない[何か]。
右側全面がボロボロの状態、
右耳は無い、右腕も肘から捻じれ取れかけてる。
右腹からは腸らしきものが垂れていた。
普通の人なら身動きも出来ぬ状態だろう。
そんな状態にありながら「あー」とか「うー」しか声を出さず、
残っている左目は真っ赤に光っていて左手を前に突き出して近づく物体。
男はため息をついて持ってた杖を構え刀身を引き出した。
有名な盲目の按摩師が使う仕込み杖という模造刀だ。
男は刀身を近づいてくる[何か]の左目前に構えた。
[何か]は刀身が目に刺さっても前進してくる。
しかし20センチほど刺さった時点で[何か]は動きを止めゆっくり後ろに倒れた。
男は冷めた目で[何か]を見つめ、動き出さないのを確認した後、
ごみ捨て時に使用してた手袋を付け、[何か]の左足を掴んで私道と県道の合流地点まで引きずった。
まだビクビクと痙攣してる[何か]を男はガードレールの下から崖下に蹴り落した。
男は遠くの街がある方向に目を向け、そこに何本もの煙が立ち昇っているのを星明かりで確認した。
男は家に向かいながら食料備蓄の量や飲料水の量、これからの行動をどうするのかを考えていた。
男が門から中に入る直前、キラリと流れ星が流れた。
その一瞬の光に照らされた男の口元は、誰が見ても嬉しそうな笑みを浮かべていた。
この作品は別主役の18禁版も掲載予定です。
予定は未定、確実な訳ではありません。
長く続けられるように頑張ります。