『専属騎士の役目』
遅くなりすいません。
「んんー」
昨日は疲れてすぐに寝てしまった。
(あれ?何か重い・・・)
むにゅむにゅと狼竜の胸元で変形する胸は気持ちがよかった。
「って!?サクーー。寝てるんだし起きるまで待つか」
サクラの可愛い寝顔を見ているとまた、うとうとしてきた。
「また寝るんですか?」
「えっ」
ミラがいた。
(み、見られたー!ミラだけにw)
「つまんないですね」
「すいませんねぇ!」
「んー?あ、おはよー狼竜」
まだ半分しか目を開けてないもののふらつきながら起き上がった。
「ごはんかー?」
「はい。ですがまずは顔を洗ってください」
「んー」
「狼竜さんも」
「うん」
サクラと一緒に洗面所に向かう。
「先、洗うな」
「んー」
水を出して顔を洗う。みんなお湯だけど覚めるなら水だよね。
「ふぅ。次サクラ・・・って、何で脱いでんの!?」
「んー?おふろじゃないの?」
「違うよ!顔洗うの。水?」
「やー」
(サクラって寝起き悪いな・・・。幼い子みたいだ)
「洗ってー」
「自分で洗いなさい」
「んー」
渋々了承したのか、顔を洗い出した。
リビングに行くと、ご飯が並んでいた。
「おっ、今日は家庭的」
「いつも家庭的ですが」
(いやいや、あんな飯なら家庭的じゃねー)
「んっ」
フルーツが沢山あり、そこには美味しそうなりんごが。
「これ食うな」
「どうぞ」
「この朝食はミラが食べて」
「何か嫌いなものでも?」
「いや、朝はそんなに食べたくない」
そう言ってりんごを齧った。
「・・・。わかりました。ですが、食べたくなったら言ってください」
「うん」
すると、サクラが聞いてきた。
「狼竜ってお腹空かないのか?」
「いや?しっかり食ったら3~4日は我慢出来るけど」
「えっ」
「あくまで我慢だからな。貧しい訳じゃない」
「そうなんだ・・・」
「うん」
(りんごうまいな・・・。今日何すんだろ)
「あ、狼竜。今日は王の所にいくぞ」
「え、なんで」
「狼竜はこの国・・・アルバスの2番目に勝った。1番目と戦って、負けたら晴れて2番目入り、勝ったら1番だ」
「ああ、そう言う事」
(1番と戦うの?マジで?)
「んじゃ、行くか」
☆
王の城まで軽く2時間かかった。
「何で城に行くの?」
「王に言わないといけないから」
「何を?」
「狼竜が騎士になったこと。2番目を倒したこと」
「え、騎士になったことも言わないといけないの?」
「うん。現国王は臆病なんだ。だから1番を専属騎士にした」
「ふーん」
(臆病か・・・。まぁ実際に暗殺があるんだし、防御固めるのは悪くないけどな)
「着いたぞ」
「おぉ、でけー」
やはり王の城となると、サクラの豪邸が可愛く思える。
サクラの豪邸の約3倍くらいの高さがある。さぞかし広いのだろう。
(何回建てだよ)
見える限りだと、7階くらいある。
「良く頑張ったな」
乗り物の竜に礼を言っていた。
(サクラってこういうことするからいいよな)
「行くよ」
「うん」
門番の所まで行き、何やら手帳みたいなものを見せた。
「アイヴェルクルム家だ。いれろ」
「はっ!」
たった一言で巨大な門が開いた。
「武器をお預かりします」
「私はいいが隣のは取るな。私の騎士だ」
「わかりました」
(てことはしまっていいのかな?)
剣刺しに呪いの宝刀をしまう。
「なぁサクラ」
「なんだ?」
「王って、どんな人?」
「簡潔に言えば、顔は怖いが優しい人だ」
「優しい人・・・ね」
昔を思い出してしまう。
幼き日に、狼竜は仲のいい友達と鬼ごっこをしていた。しかし、友達が鬼ごっこの最中に近くの流れが速い、川に落ちてしまった。
「助けて!たす・・・・・・」
「待ってろ!」
何の迷いも無く、川に飛び込んだ老人。みんな助けられるのか?と、思っていた。
しかし、そんな素振りなど待ったく持って見せず、川から出てきた。
「なんでこんなに近い所で鬼ごっこなんて!」
こっぴどく叱られた。そりゃそうだ、命の危機だから。
その老人の帰り際に付けたら、ボディガードにがっちり守られていたのを知っているのは、狼竜だけだったが。多分、国の王様だろう。
(王って、やっぱり優しいんだ)
中に入るとドレスを身にまとった美しい女性が現れた。
「あら?どうしたのですか、サクラさん」
「ナナか」
「ナナ?」
「ああ、王の娘。ちょうど私と同い年だ」
「バルベルム・デルタ・ナナティールです。ナナと呼んで下さい。そちらの方は?」
「とんでもないです、ナナティールお嬢様。サクラ・アイヴェルクルムお嬢様の、騎士をさせていただいている綾辻狼竜です。以後、お見知りお気を」
慣れない事をして、少し緊張していたが王族の娘さんに挨拶ができて、ほっとする。
「お父様の所に行くの?」
「ああ」
「じゃあ、連れて行って差し上げます」
3人で王の所まで向かう。
「それにしても、狼竜さんって強いんですか?」
「まあな、今日は1位の奴と順位決戦をしてもらおうとも、思っている」
「まあ、そんなに強いのですか?」
「現時点なら、2位に余裕で勝った」
どうだ、とばかりに自信満々な顔で言い放つ。
(あはは、まだ能力とかないんだけどね)
「そうなんですか・・・。あ、付きましたわ」
もしかしたら、門よりもでかいかもしれないほど、巨大な扉。
それを開けると数m先に玉座が合った。
「お父様!サクラさんですの!」
扉から少し歩いた所で、王に来客を告げる。
そして、玉座まで向かうと、王がいた。
「よく来たな、サクラ・アイヴェルクルム。して、何用だ?」
「はい。持ちましては、私の騎士の認定と、現1位、王の騎士、との順位決戦をと」
「ふむ」
少し考えた様に見えた。
「その騎士とやらは、そこの?」
「はい」
「あ、えっと。サクラ様の騎士、綾辻狼竜です」
「・・・」
すごい見られた。数秒の間、沈黙が続く。
「サクラ・アイヴェルクルムの騎士を認めよう。だが、何故いきなり順位決戦を?」
「それは、2位のグラン・バルゼリットを倒したからです」
「!?」
軽く動揺していた。
「順位決戦をしたのか?」
「いえ、ただ戦っただけです」
「ふむ」
(そうだよな・・・。もし負けたら、自分の騎士が2位になるもんな)
「よかろう。順位決戦をしよう」
「ありがとうございます」
「では、騎士を呼ぼう」
お互いに準備を始めた。
「狼竜」
「何?」
「この試合、絶対勝て」
「さ、最善を尽くします」
すると、またあの大きな扉が開いた。
「あいつだ」
「え?」
「あいつが1位でなおかつ、王の騎士。ザクスタン・レイビュートだ」
「なっ・・・」
女だった。
(名前が男だろ・・・)
「王が決めた名だ。騙すようにと」
「ん?」
(武器が無い?)
「気をつけろよ。奴の武器は重い。そして、魔法も使ってくる」
まだ魔法の使えない狼竜には、苦戦しそうに思えた。
(でも、やるしかない。それが今の、俺に出来る、サクラのための事だ)
そう決心し、相手を見つめた。