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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第二章 幕末前夜
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  吉田松陰の脱藩

 吉田松陰は江戸で佐久間象山の塾に通っていた。

 嘉永4年の夏に吉田松蔭は宮部鼎蔵みやべていぞう江幡五郎えばたごろうらと共に東北旅行をすることを決める。

 松蔭は長州藩に東北旅行の許可を得ていた。異国に対する北方の備えを検分してくるのが目的だ。

 出発の日を赤穂浪士の討ち入りの日として12月15日に設定する。

 ところが長州藩の手続きが遅れ通行手形が手に入らなかった。

 武士である松蔭であれば手形がなくとも旅行は出来る。関所もかなり形骸化しており松蔭も手形無しの旅を何度かしていた。

 だが、長州藩は松蔭の旅を延期するように言う。

 このお役所的な態度に松蔭は腹を立てた。そして誰もが想像しない暴挙に出たのである。


 嘉永4年12月14日。吉田松蔭は長州藩を脱藩してしまった。


 驚いたのは宮部鼎蔵と江幡五郎である。実は江幡五郎は仇討ちのために東北に行く事になっていたのだ。それゆえに赤穂浪士の討ち入りと合わせて東北遊学を12月15日出発と決めていた。律儀で純粋な松蔭はその日付をずらすわけにはいかないと思い込んだのである。

 急いでおいかけた2人は水戸にて松蔭に追い付く。

 脱藩してしまったからには仕方が無いと3人はそのまま旅を続けることになった。


 松蔭は水戸に滞在中に会沢正志斎あいざわ せいしさいと会っている。会沢は新論を書いて尊皇攘夷の思想を広めた人物である。

 長州藩は元々尊王の意識が強い藩である。それは幕府に対する反発もあるし幕府が成立する以前から朝廷と繋がりがあったことにも関係するだろう。そして松蔭はアヘン戦争で西洋の恐ろしさと非常さを知っている。自然と尊皇攘夷の思想に染まるのは当然だった。

 二人は意気投合して松蔭はますます尊皇攘夷の思想に染まっていく。やがてそれは松下村塾の生徒に受け継がれることになるのだ。



 一方で残された方も大騒ぎである。

 長州藩は松蔭になんらかの罰を与えないといけない。それをどうするか頭を悩ませていた。

 そこに松蔭の友人である来原良蔵くるはらりょうぞうが自首をしてきた。松蔭に脱藩をそそのかしたのは自分であると。

 来原は本当に脱藩を勧めたわけではない。松蔭から相談を受けて止めなかっただけである。

 だが、松蔭の計画を知っていた来原は覚悟を決めて自分が罪を被るつもりで見送ったのである。義に厚い男だった。

 長州藩は来原良蔵を謹慎処分にすることで松蔭の処罰を保留することになる。




 吉田松陰、宮部鼎蔵、江幡五郎の3人は冬の東北を旅する。

 途中で江幡五郎は仇討ちのために別れて2人旅となった。

 余談だが江幡五郎は仇討ちを失敗し仇が病死するまで様子を伺っていただけであった。それを後で聞いた松蔭は激怒したという。江幡の心意気にうたれて脱藩までしたものの肝心の江幡の決意が中途半端だったことに怒り嘆いたのである。そして松蔭はこのことを他山の石として自らは理想に殉じようと決意を固める。松蔭の一途なまでの頑固さの一端となるエピソードだ。


 吉田松陰、宮部鼎蔵は冬の東北を旅した。

 この時に会津藩にも立ち寄っている。松蔭は会津藩の藩校・日新館などを見学している。

 幕末の長州藩と会津藩の争いの少し前に交流があったのだ。

 そして幕末の会津藩を率いることとなる松平容保はこの年に藩主となっている。

 松蔭の弟子と松平容保の戦いが始まるのは10年ほど後の話。




 吉田松陰と宮部鼎蔵は東北を一周して江戸に帰還した。

 帰還した松蔭は自分の身代わりとして来原良蔵が自首して謹慎になっているという話を聞く。

 友人に罪を着せたままにしておくわけにもいかずに松蔭は長州藩邸に自首した。

 松蔭は長州に送られて脱藩の裁きを受けることとなる。


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