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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第二章 幕末前夜
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  お由羅騒動

 島津斉彬には子供が6人いた。4人の男子と2人の女子であるが、その内で生きているのは2人だけである。

 生きているのは三男と四男、2人とも幼児でありこれからどうなるか分からない。

 幼児死亡率の高い江戸時代とはいえ不運が続いたといえる。

 斉彬派の藩士はこれをお由羅が呪い殺したと信じていた。


 お由羅とは薩摩藩主・島津斉興(しまづなりおき)の側室であり愛妾である。斉興はお由羅をとても愛していて彼女との子供である久光を藩主の座につけようと考えていたのである。

 斉彬の陰謀により調所広郷が自害したことでその思いをますます強くしていった。

 そして薩摩藩内の斉彬派への締め付けを強くしていく。

 藩内を久光擁立派に染めようとしていた。


 それに反発したのが斉彬派だ。

 彼らは斉彬が藩主になることを強く望んでいた。

 このままでは斉彬が廃嫡されるのではないかという危機感を強く感じる。

 そしてついに久光とお由羅の暗殺計画を立てた。

 彼らは武士であるから藩主である斉興を害することまでは出来なかった。それで側室であるお由羅が悪の根源であるとして彼女とその息子を暗殺することで斉興を諌めようとしたのだ。

 君側の奸を討つ。古来からクーデーターの定番である。

 彼らはお由羅が斉彬の子を呪い殺したと信じていたので敵討ちのつもりでもあった。



 この計画は直前で漏れた。内部からの裏切り者にあったのだ。

 暗殺計画を知った斉興は激怒する。

 実行犯を捕らえて切腹させると直接は暗殺計画に携わっていない斉彬派にたいしても遠島や謹慎といった処分を次々と課した。斉彬派に対する弾圧を始めたのである。


 この粛清に若き日の西郷隆盛さいごうたかもり大久保利通おおくぼとしみちも巻き込まれている。

 西郷の父が御用人をしており介錯を務めた赤山靭負が切腹をさせられた。西郷の父はその介錯をしたようである。この話を聞き血染めの肌着を西郷は斉彬の襲封を強く願う様になる。

 大久保の父は罷免さて遠島になり、本人も免職、謹慎となり非常に困窮した。

 これを西郷家が援助して助けた。

 西郷も大久保も下級武士で生活が苦しくて畑を耕したり魚を取ったりと半農生活をしていたようだ。


 この一連の弾圧事件は高崎崩れ(お由羅騒動)という。





 黒田長溥は薩摩藩の島津重豪の息子だった。福岡藩に養子に入り藩主を継いだのである。

 つまり島津斉彬の大叔父ということになる。年齢的には長溥の方が2歳年下であるが。

 親戚と言うこともあり2人は若い頃から懇意だった。

 このことは知られており薩摩藩と福岡藩の関係も良好だったという。


 さて、当然のように薩摩藩の藩士もそのことを知っている。

 お由羅騒動で弾圧を受けていた斉彬派の藩士が脱藩して逃げ出した。

 彼らは福岡藩へ逃げ込んで斉彬派の窮状を訴えたのである。

 斉興は長溥へ藩士を引き渡すように要請した。

 単なる犯罪者であるというが斉興の言い分であるが長溥はこれを断る。


 そして黒田長溥は阿部正弘へと状況を伝え斉彬の藩主就任を強く説いた。

 阿部正弘も斉彬が薩摩藩主となるのを強く望んでいる。

 事態がここまで切迫すると手段を選んでいられない。

 ついに将軍を動かすことにした。


 徳川家慶はその要請を受けて斉興に隠居を促すことにした。

 斉興に茶器を送ったのだ。茶器を贈呈されるというのは隠居してゆっくり過ごせという意味である。

 将軍からの直接の圧力に対してさすがに斉興も為す術がなかった。


「私は隠居して家督を斉彬に譲ります………」


 島津斉興は幕府からの圧力に屈した。

 その心情はいかほどであったか。

 斉彬に対する激しい憎悪が渦巻いていたのは想像に難くない。



 嘉永4年2月2日。島津斉興隠居。島津斉彬、薩摩藩主就任。

 同年5月。島津斉彬、藩主として始めて薩摩藩に入る。

 これから島津斉彬の藩政改革が始まることになる。

 幕末の名君と名高い島津斉彬の本領発揮はここからであった。


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