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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第二章 幕末前夜
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  嘉永の将軍継嗣問題

 嘉永2年2月。徳川斉昭に水戸藩の藩政復帰が許された。

 阿部正弘からの働きかけである。

 水戸藩は改革派と門閥派が争っていて斉昭を隠居に追い込んだ門閥派が藩政を仕切っていた。

 阿部正弘と懇意にしてきた斉昭は幕府の力を利用してなんとか藩政を取り戻したかったのだ。


 水戸藩の現藩主は斉昭の息子の徳川慶篤とくがわよしあつだ。一橋慶喜の同母兄でもある。

 彼は13歳の時に家督を継がされて門閥派の傀儡として藩主の地位についていた。

 父の斉昭や弟の慶喜と比べると我が弱い。阿部正弘のように政局を上手く泳ぎ調整するだけの手腕もない。単なる気の弱い飾りの君主だった。

 嘉永2年に斉昭が藩政に復帰すると慶篤は肩の荷が下りたかのようにホッとした。

 この時でまだ18歳なのでいささか仕方ないこともあるだろうが………。




 斉昭が藩政に復帰できたことの1つに慶喜の存在があるだろう。

 幕府に大きなコネが出来たこともあるが慶喜が重石となり斉昭も無茶なことが出来ないと考えられた。

 慶喜は少年ながら聡明で評判が良く何かあれば斉昭を抑えてくれる存在になるだろうと期待されてもいた。

 そんな慶喜に期待してしてまった人物がとんでもないことを言い出した。


「将軍職を一橋慶喜に譲りたいと思う」


 12代将軍・徳川家慶である。

 家慶には20人以上の子が生まれた。だが、ほとんどが短命で現在成人している男子は1人しかいなかった。

 だがその男子は病弱で障害を持っていた。おそらくは脳性マヒであると思われる。発作を起こすこともあり将来が心配されていた。次代の将軍として指名されてはいたが不安が大きかったのである。

 そこに聡明な一橋慶喜が現れた。

 一橋家は将軍家に子がいなければ将軍となれる家柄である。血筋は御三家水戸藩のものなので申し分ない。

 家慶からすれば自分の息子に将軍という重責は担えないので解放したいという親心であった。


 しかし幕府の重臣から反対の声が上がる。

 将軍が慶喜となるとただでさえ煩い斉昭がどうなるか分かったものではないからだ。

 斉昭に近しいと思われていた阿部正弘までもが強行に反対したことから家慶はは意見を引っ込めた。



 家慶の嫡男であり次期将軍候補――――徳川家定はこの時26歳である。

 前年に正室がなくなり子がまだいない。

 家慶が乱心したのは家定に跡継ぎとなる子がいないからだと考えた幕府の重臣らは家定の正室を探すことにした。




 嘉永2年閏4月。

 話は少しずれるが御三家紀州に新しい藩主が就任した。わずか4歳の子供である。

 徳川菊千代――――後の14代将軍・徳川家茂(とくがわいえもち)だ。

 この少年が後に将軍の座を慶喜と争うことなど神のみぞ知る出来事である。



 さて、未来のことはおいといて嘉永2年の話だ。

 この時に次期将軍の座を争っていたのは家定と慶喜だ。

 嘉永将軍継嗣問題とでもいおうか。もっとも将軍家慶の独り相撲でしかないのだが。


 嘉永2年12月、家定は公家の娘の一条英子と婚姻する。

 これで正室が決定して徳川将軍家は安泰に思われた。

 しかし半年後の嘉永3年6月、英子は亡くなってしまう。

 これにより再び家慶が慶喜を養子にして将軍職を譲れないかと言い出し始めた。

 幕府首脳陣はこれをなだめて新しい正室を迎える準備を始めなければならなかった。


「次の正室は健康な女性が良いのではないか?」

「公家ではなく武士の娘から選んだ方が良いだろう」

「新しい正室は薩摩から迎えるのはどうだろうか?」

「それはいい。過去にも前例があるし薩摩の女性は丈夫で健康的だと言うぞ」


 このような意見が幕閣の中から出てくることになる。

 そしてそれは薩摩の島津分家に生まれた少女の運命を大きく変えることになるのだが、それはまた後の話。


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