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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第二章 幕末前夜
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  調所広郷の服毒自殺

 島津しまづ斉彬なりあきらは文化6年(1809年)に江戸薩摩藩邸にて生まれた。

 彼は曽祖父である第8代藩主・重豪しげひでの影響を受けて洋学に興味をもった。

 それは世界情勢を見聞きするということであり見識を広げ若くして聡明な若者として有名になる。

 江戸城では若き俊英としてもてはやされている。


 対して斉彬の父親の島津斉興しまづなりおきは重豪を恐れ嫌っていた。

 島津重豪は薩摩藩において近代化政策や教育の充実を手がけたが、同時に莫大な借金も残していた。隠居後も実権を手放さずに藩主となった斉興を傀儡として抑え続けていたのだ。


 重豪が死んだ後に調所広郷ずしょひろしげを抜擢した島津斉興は藩政改革を実行していくことになる。

 調所の改革は容赦がなかった。莫大な借金を一部は踏み倒し一部は250年の分割払いとした。その条件を飲んだ商人には藩から特権を与えている。また、琉球を通した密貿易も活発化させて借金を融通させた商人を密貿易に参加させた。

 年貢も厳しくなった。特に奄美では黒糖地獄と呼ばれるほどの厳しい取立てがあった。

 広郷は行政改革や農政改革も始めているが、以上のことから評判は良くない。

 むしろ薩摩の人々から忌み嫌われる存在となった。


 その苦労の末に500万両とも言われる借金は無くなり、250万両の蓄財をするまでとなった。

 斉興にとって悪夢のような時代が終ったのである。

 しかし、息子であり世子の斉彬は重豪にそっくりだった。西洋の蘭学に傾倒し江戸で多くの大名と交わり政治にも感心が高い。

 息子とはいえほとんど離れて暮らしていた斉彬に対する情は薄かった。それ以上に重豪に似た斉彬に対する警戒感が強かったのである。

 斉彬が藩主になれば薩摩藩の財政は再び破綻する。

 それが重豪と調所の共通認識であった。それで愛妾の子であり自ら可愛がっている久光に後を継がせたくなった。

 そうなると話はこじれる。斉興と斉彬は互いに反発し憎み合うようになり藩士も二分する争いになる。

 薩摩藩は斉興派と斉彬派で真っ二つに割れていたのである。





 薩摩の方では国を二分にするほどの勢力を争いをしている中で江戸城の島津斉彬の名声は高かった。

 阿部正弘は次第に徳川斉昭よりも島津斉彬を頼りにするようにまでなっていた。

 この優秀な人材を埋もれさせたくないと考える。そして斉彬も40歳になり未だに藩主となれないことに焦りを感じていた。

 そして2人は姦計を練り斉彬の薩摩藩主就任を画策したのである。


 薩摩藩邸に秘密裏に薩摩の密貿易の証拠が届けられた。

 これを用意したのは斉彬である。表沙汰になれば薩摩藩の改易さえありうる爆弾を阿部正弘に提供した。

 そして薩摩藩に圧力をかけたのだ。

 江戸の薩摩藩邸に在住していた調所広郷は裏に隠された陰謀を見抜く。

 斉彬が藩主になれば苦労して改善した藩財政がまた破綻してしまうかもしれない。

 藩政改革と財政改革は調所の人生をかけた一大プロジェクトであった。

 それが水の泡となるのは耐えられなかった。悩んだ末に調所は決断した。


 嘉永元年12月18日。調所広郷、服毒自殺。

 密貿易に関する罪を一人で被り自殺したのである。。

 調所の死により密貿易の件は片付いて有耶無耶になってしまった。

 斉彬と正弘の策は調所の手により潰されたのである。

 そして調所を失った斉興は激怒して実の息子である斉彬との対立を強くすることになる。


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