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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第一章 江戸時代
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  阿部正弘と徳川斉昭

 徳川斉昭の水戸藩での藩政改革は天保の改革にも影響を与えたと言われている。

 先進的であり財政再建・人材育成・技術向上に結果を残していた。

 しかし、多くの敵を作ったのもまた事実である。斉昭は藩内の保守派である門閥派と寺社勢力を敵に回していた。

 天保15年に斉昭は幕府から隠居謹慎を言い渡される。

 斉昭の改革に反発していた門閥派の陰謀であった。

 水戸の門閥派と寺社勢力は幕府に働きかけて大奥を味方につけた。斉昭は大奥からも嫌われていたのだ。

 そして大奥は幕閣の一部と結びついて斉昭の罪状を纏め上げて処分を下した。

 幕府内にも先進的過ぎて強引に物事を進める斉昭を危険視す人々もいた。

 それぞれの勢力が斉昭の改革を危険視して追い落とす協力をしたのである。


 海防強化のためということで軍事訓練をしていたことが幕府への反抗にみられた。

 寺の鐘を徴収して鋳潰し大砲を作っていたことが寺社勢力を蔑ろに軍備増強をはかり幕府への反抗にみられた。

 蝦夷地開発を進言していたことが独立国を作ろうとしていたと邪推された。

 失脚の理由としてはいくつか考えられた。

 改革を推進していた側近の藤田東湖らも次々と謹慎の命を受けることとななる。


 徳川斉昭は隠居して家督を息子の徳川慶篤とくがわよしあつに譲った。慶篤は未だ14歳である。藩政は反斉昭の門閥派に支配されていくことになった。





 弘化2年2月22日。


 阿部正弘は27歳で老中首座となった。

 若い阿部正弘は老中や他の幕閣と強調して政治をすすめていくことにする。

 最初にした仕事はオランダへ親書の返事を書いたことだ。

 開国はしないので余計なことはしないで欲しいという明確な拒絶の手紙を送った。



 オランダにて幕府の返事を聞いて落胆した人物がいた。それはシーボルトだった。

 文政12年に日本から国外追放処分を受けたシーボルトはオランダ国王に仕えていた。

 シーボルトはオランダ国王ウィレム2世に日本へ開国を迫るよう進言していた。日本へ開国を求める新書の草案はシーボルトが書いていたのだ。こうして送られた親書に対して阿部正弘が開国拒否の返事をしたのである。

 日本に対する開国工作が失敗したシーボルトは失意の元にドイツへと帰国した。

 そこでドイツ貴族の娘・ヘレーネと結婚する。2人の間には子供が2人生まれた。アレクサンダーとハインリッヒである。




 話を日本へと戻す。

 阿部正弘は開国を拒否して鎖国政策を続けるということで海防の必要性を強く感じるようになる。

 海外からの圧力は避けられない。それに対抗するために情報を集め対策を練る必要があった。

 それで阿部正弘は海防問題に強い徳川斉昭に相談することにすることを考えた。


 斉昭の謹慎は半年ほどで解除されていた。

 彼の名声は高く能力を惜しむ声が幕府内でもあったからである。

 この時に斉昭に処分の解除を伝えたのが阿部正弘であり、2人はこれで懇意となっていた。


 阿部正弘は海防問題に対して詳しいブレーンを求めていた。

 徳川斉昭とはいえば謹慎が解けたとはいえ隠居の身で水戸藩の藩政に参加することは出来ない。彼の側近らは未だ謹慎中の身であり藩政改革は中断させられて何もすることがない。

 徳川斉昭としても藩政に復帰するために幕府への伝が欲しかった。

 2人は書簡を交わして親交を深めていく。

 こうして徳川斉昭は幕政に影響力を持ち始めることになったのである。



 また、阿部正弘は海防掛という職を常設することにした。海防掛は今まで外交問題や海防問題が必要な時だけの臨時職であったが常設することにより常に海外の情勢に目を光らせようというのだ。

 海防掛を自らが兼任し他の老中などの幕府の権力者が役につくことで海防強化を宣言するという意味もあった。

 海防掛には阿部正弘の他に牧野忠雅まきのただまさ(老中)、大岡忠固おおかただかた(若年寄)、本多忠徳ほんだただのり(若年寄)が任じられている。



 阿部正弘の政権運営はこうして始まったのである。


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