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End Of Edo ~幕末~  作者: 吉藻
第一章 江戸時代
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  水野忠邦の再任

 天保15年(1844年)5月、江戸城で火事が発生した。

 大奥を火元とした火事は瞬く間に燃え広がり江戸城本丸を消失させた。

 家慶は命からがら逃げ出したという。また、この火事で大奥の女中が40人以上死んだとされている。かなりの被害が出たのは間違いない。


 この火事の調査に当たったのが老中に就任したばかりの阿部正弘だった。

 彼は大奥にコネがあることで調査の責任者となった。

 火元は大奥の実力者の姉小路の部屋だという噂があった。だが、実際に火元とされたのはその隣の部屋だった。

 阿部正弘と姉小路には繋がりがあり政治的な決着をつけたと考えられる。

 この采配により阿部正弘の大奥での影響力はより高くなり将軍からの信頼度も高くなっていく。



 この火事で燃えた江戸城本丸の再建を任されていたのは土井利位だった。

 ところが土井利位は再建費用を集めるのに手間がかかってしまう。

 そのことに家慶は難癖をつけて土井を非難した。

 実のところでいえば家慶は土井利位のことをよく思っていない。

 天保の改革を推進して水野忠邦に全権を預けたのは将軍である家慶だった。

 その家慶の意思を確認することなく水野忠邦が失脚させられたことで自分が蔑ろにされたように感じていたのである。

 天保の改革に関する未練というものもあった。

 これらの考えにより家慶は将軍の強権を発動させた。



 水野忠邦の老中再任。

 この前代未聞の人事に江戸城は混乱した。




 水野は復帰してすぐに自らを裏切った者らへの報復を開始する。

 土井利位は報復を恐れて病気を理由に登城を拒否、そのまま辞任してしまった。

 鳥居耀蔵は過去の不正を水野に指摘されて失脚、四国の丸亀藩に押し込めとなった。

 余談ではあるが丸亀藩での鳥居耀蔵の評判は悪くない。政争から脱落して毒が抜けたのだろうか。

 漢方の薬を煎じて作り領民の治療を行っていたそうだ。林家の出身であったため学識が豊富で、丸亀藩士も教えを請いに訪問し、彼らから崇敬を受けていた。明治になり許されて東京に戻った時に「ワシの言うことを聞かないから幕府が潰れた」と憤っていたとのことなので私利私欲だけでなく幕府のために泥を被っていたとも思える。とはいえ無実の有能な人材を次々と陥れて死なせた罪は確かであり悪人と呼ばれて致し方ない人物だろう。



 徳川家慶は地味な将軍である。後世での評判は良くない。同世代でも松平春嶽などが批判している。彼は改革に意欲的であり人材を抜擢しようと考えていた。しかしそれは場当たり的であり腰が据わっていない。

 罷免された老中がわずか10ヶ月で再任という前代未聞の人事に批判が集まった。

 複数の幕閣が病気を理由に登城を拒否してしまった。

 そうなると家慶は不安になる。彼には初志貫徹するだけの意思の強さがない。


 そこで出てきたのが阿部正弘である。

 将軍からの覚えの良い正弘は混乱する情勢の中で上手く立ち回り勝手掛という役目を受けた。

 勝手掛とは幕府の予算を動かす重要な仕事だ。今で言う財務大臣のようなもので幕府の予算の使い方や人事に強い影響がある役職だ。

 財政に関する権限が自由にならない水野忠邦は思うように手腕を振るえなくなってしまった。

 名前ばかりの老中首座となり幕閣も阿部正弘の言うことを聞くようになる。




 水野忠邦と阿部正弘が江戸城で静かに対立を始めていた。

 そんな頃に長崎に一通の親書が届く。

 その一通の親書が江戸城を激震させることになった。


 それはオランダ国王から幕府に開国を求める親書であった。


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